コロナ・ショックによる日本経済への影響

日銀の雨宮副総裁(写真:ロイター/アフロ)

 日銀の雨宮副総裁は、7月29日の日本記者クラブにおける「最近の金融経済情勢と金融政策運営」と題する講演のなかで、大規模な感染症の流行における経済変動などについて述べていた(日銀サイトより引用)。

 「感染症の拡大局面においては、経済を下押しする力はきわめて大きなものになる。」

 「感染症の急速な拡大に歯止めがかかった後の移行局面では経済は大きく落ち込んだ状態から回復するものの、経済への下押し圧力は残る。」

 「感染症が再び大規模に拡大すれば、感染症拡大局面での経済に対する大きなショックの二次的効果、すなわち、経済主体の支出スタンスへの影響についても注意が必要となる。」

 「支出スタンスの大きな落ち込みが回避できれば、それまで抑えられていた需要、いわゆるペントアップ需要の発現などにより、経済の足取りはよりしっかりとしたものとなる可能性がある。」

 ペントアップ需要とは買い控え需要といった意味であり、抑制されていた需要の回復を意味する。

 各国の経済指標の動きなどをみると、このペントアップ需要が中国などで顕在化しつつある。しかし、欧米や日本では新型コロナウイルスの感染者数が再拡大しており、感染症拡大局面での経済に対する大きなショックが起きる懸念も出ている。

 株式市場ではこのペントアップ需要への期待と感染症拡大局面での経済に対する影響への危惧が交錯している。

 さらに雨宮副総裁は「今回、金融システムが全体として安定性を維持していることは、リーマン・ショック時との大きな違いです。」と指摘した。

 金融システムが安定していることは、民間金融機関を通じた日銀や政府の資金繰り支援策の効果を発揮させやすくする面もたしかにある。ただし、実体経済の悪化が長期化すれば、それが金融システムに影響を及ぼし、負の相乗作用が始まる可能性もあるとも副総裁は指摘した。

 さらに人々の行動の変化に関し、新たな財やサービスの需要を産み出す面もあるということも指摘している。米国株式市場での指数のうち、ナスダックがいち早く過去最高値を更新したのもこのような期待が背景にあったためであろう。

 そして、今般の感染症の経験は、キャッシュレス化・決済のデジタル化への関心をさらに高め、決済システムの面でもイノベーションを促す可能性も指摘した。果たして、どのようなイノベーションが促されるのかも興味深いところとなる。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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