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コロナ後の物価はどうなるのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染が再び拡大しているなか、コロナ後を予測するのはどうかとも思うものの、コロナ後に物価はどうなるのかを予測してみたい。

 この前提として、新型コロナウイルスの国内での感染拡大とそれを防止するためのロックダウンが、我々の社会生活を大きく変えるであろうとの立ち位置で考えてみたい。

 ただし、これについては、コロナ以前に戻るとの見方と、コロナは我々の意識を大きく変えることになるとの見方に分かれており、それがわかるのもコロナ後ということになる。

 新型コロナウイルスは「巣ごもり」とも呼ばれた状況を作った。会社に行かず自宅で仕事をする、いわゆるテレワークである。これを可能にしたのはパソコンとインターネットの普及であった。しかし、パソコンとインターネットは30年以上前から普及している。テレワーク環境は少なくとも10年前には整っていたのは、10年間テレワークをしている私がよく知っている。

 パソコンとインターネットだけでできる仕事ばかりでないことも確かである。それでも仕事と呼ばれるもののうち、パソコンとインターネットだけでできる仕事もかなり多いことも確かではなかろうか。

 しかし、仕事は会社でするものとの認識が強く、特に「会議」が重視され、コミュニケーションが重んじられていた。このため、個々がそれぞれ家で仕事をするというのはなかなか現実的には受け入れがたかった。

 その障壁がロックダウンによって消失した。会議は集まらなくてもネット上でも可能であることも認識されたと思う。テレワークや在宅勤務への認識が大きく変化した。これにより高い家賃を払って大きなオフィスを構える必要性が後退することになる。

 通勤時間が節約できれば、その分、余暇も生まれる。なんといっても通勤ストレスがなくなれば、健康にもなる。これは私も実感したことである。それはつまり医療費の節約とともに、憂さ晴らしとして外で飲む機会も少なくなることになろう。

 それがどれだけ物価に影響するのかは読めないが、少なくとも物価を抑制する効果は期待できる。そしてオフィスへの需要後退により家賃も下がることになろう。これは物価にとって大きな抑制圧力になる可能性がある。

 しかし、余暇の時間が拡がれば趣味の時間が増え、こちらの投資は拡がる可能性がある。新型コロナへの脅威が後退すれば、レジャーなどへの投資が増加する可能性がある。これによる物価の上昇の可能性もある。

 ただし、やはり家賃の低下、通勤費の削減などは物価には抑制圧力となると予想される。しかし、日本の物価は結局は原油価格次第の側面がある。コロナ後に景気が回復し、原油価格が上昇すればそのまま物価は多少なりとも上がってこよう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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