新型コロナウイルス感染拡大を受けて、個人の景況感は過去最大規模の落ち込み幅となったが
日銀は7月7日に「生活意識に関するアンケート調査」(2020年6月調査)の結果を公表した。これは全国の満20歳以上の個人を対象にしたアンケート調査であり、コロナ禍で個人の景況感がどのように変化していたのかをみてみたい。
現在を1年前と比べた景況感については、当然ながら前回の3月調査から大きく悪化していた。3月の「悪くなった」が39.6%となっていたのに対し、6月は72.1%が悪くなったと答えていた。
景気が1年前より「良くなった」と答えた割合から「悪くなった」を引いた景況感判断指数(DI)は前回から34.9ポイント下がり、マイナス71.2になった。落ち込み幅は2006年に今の調査方法になってから最大だとか(7日付日経新聞)。
現在の景気水準についても、「どちらといえば悪い」と「悪い」の合計が3月の55.6%に対して、6月は81.3%となった。特に「悪い」と答えた比率が3月の11.2%から6月は40.4%に急増した。
景況判断の根拠としてのトップは「自分や家族の収入の状況から」という回答が最も多かった。人や物の移動が制限されたことから、かなりの業種に影響が及び、収入が減少した家庭も多かったことは確かであろう。
「マスコミ報道を通じて」や「商店街、繁華街などの混み具合をみて」との回答も多かった。大手企業などではリモートワーク等を行っていても給与水準に大きく変化がなかった人も多かったものと思われる。
新型コロナウイルスの二次感染拡大の懸念は残るものの、制限の緩和も進められるなか、先行きの景況感については3月に比べて改善しつつあった。「1年後を現在と比べると」との回答は、3月に「良くなる」と答えた人が5.8%にすぎなかったのが、6月は19.3%に増加していた。ただし、「悪くなる」との回答は最も多く、3月は48.0%、47.0%となっていた。
景況感ではないものの、今回の調査で気になった回答があった。金利水準についての見方である。6月は3月に比べて、「金利が低すぎる」との回答が減少し、「金利が高すぎる」との回答が増加した。
この間、主要金利については大きな変化はなかったはずだが、「金利が高すぎる」という回答が多くなったのはなぜなのか。コロナ禍により資金繰りに苦慮しているところが、その貸出金利が負担となっていたというのであろうか。
「現在の暮らし向き」や「収入」に関しては、3月に比べて6月は確かに悪化はしている。しかし、景況感ほどの悪化は示していない。雇用環境についてもそれほど不安は感じていないという結果となってる。
新型コロナウイルスによる個人への影響は、実際にマイナスの影響を受けている人も多いこともたしかである。しかし、これが一時的なものに止まるのであれば、実体経済への影響は、懸念されたほど大きくはないのではとの見方もできるのではなかろうか。