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巨額の国債増発、今後の国の債務管理の在り方とは

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 6月22日に開催された国の債務管理の在り方に関する懇談会(第52回)議事要旨が財務省のサイトにアップされている。

 最初に理財局より「国債発行の現状と今後」について、説明が行われた。その概要には下記のような説明があった。

 「補正予算が4月、5月の2回にわたり編成されたことに伴い、令和2年度の国債発行総額は、当初153兆円から100兆円程度増加し、253兆円と過去最大の発行総額となっている。カレンダーベース市中発行額についても200兆円を上回る規模であり、こちらについても過去最大の額となっている。」

 メンバーから出された意見等にも、巨額の国債発行に関するものが、当然ながら出ていた。

 「今回、これだけ大きな、100年に一度というか、10年に一度来るようなコロナショックの中で、大変な危機が来ているわけだが、こういう中での危機というのは、過去を見ても基本的には、民間の企業や家計の負担などがいろいろな対策によって、だんだんと政府債務に置き換えられていくというプロセスだろうと思う。」

 民間の企業や家計の負担などがいろいろな対策によって、だんだんと政府債務に置き換えられていくというプロセスだが、果たしてこれに限界はないのだろうか。

 「今回もかつてない規模で補正予算が編成されており、政策的に国債が大量増発される。そうなってくると、今度は、各国の国債がグローバルに市場で生き残れるか、選別されるかという段階になってくる。各国の国債の選別は、基本的に経常収支と財政規律によって、市場の中における信頼というものが、維持されたり、また、場合によっては棄損されたりするものと考える。」

 個人的にはこの意見に同意である。各国の国債がグローバルに市場で生き残れるか、選別されるかという段階がどのようなかたちで生じるのかはいまのところわからない。しかし、これだけの各国の政府債務の膨張は、いずれ市場の中における国債への信頼を揺るがす懸念がある。

 「日本の場合は、これまで経常収支というか、いわゆる国力もしくは競争力というようなものがマクロ的にも保たれていたということ、それから、一定の財政規律への配慮が残っていたが、当然のことながら、これから、こうしたようなものがいかに維持できるのかというところが問われるということになろうかと思う。そういう意味では、市場参加者としても、こうした状況というものを、市場の目からいかにチェックできるかというところがやっぱり重要であり、特に、今回のこれだけの状況であるから、財政の拡張というものは必要であるとしても、例えば、今回10兆円の予備費あたりのところというのは、財政規律の面でのチェックが必要となる。」

 例えばとなっているが、今回10兆円の予備費は、財政規律の面でのチェックが必要となる。危機的状況の際には、すぐに動かせる大きな資金が必要であったことは確かだが、そのような急を要する資金の必要性が後退したのであれば、10兆円の予備費については、その使い道に対して注意を払う必要があると思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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