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セブン銀行のATMの設置台数が大手銀行(3メガバンクとりそな銀行、埼玉りそな銀行)のATMを上回る

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 セブン銀行のATM台数が2019年に大手銀行の合計を上回ったと6日の日経新聞が報じた。全国銀行協会によると大手行(3メガバンクとりそな銀行、埼玉りそな銀行)のATMは直近の19年9月末に約2万3300台と、3年前から11%減った。これに対して、セブン銀は2019年3月期に2万5000台を突破した。

 なんとも象徴的な出来事といえる。コンビニが店舗にATMを設置し始めたころ、大手銀行の友人が、これがペイするとは思えないと発言していたことを覚えていた。たしかに設置や管理の費用は大きい。しかし、私自身とすればたいへん利便性が高くなることが予想され、コンビニATMは衰退するのだろうかとやや疑問を持っていた。

 現実には大手銀行は設置や管理費用を削減するために、ATMの設置台数を減らしていた。日銀のマイナス金利政策もあり、収益力が落ち込むなか、固定費の大きい店舗やATMの効率化を進めた。

 これに対して、コンビニにはATMが必需品となっていた。ATMは買い物客の利便性を高める付加価値を持つのは当然ながら、多少の手数料が取られてもコンビニでお金を下ろさなければならない事情も存在する。

 まさに私がその典型ともいえるかもしれない。田舎で10年以上前からテレワークをしているが、都心に勤めていた際に開いた銀行の口座をいまだに使っている。しかし、その支店は当然ながら近くにはない。このため、現金が必要となればコンビニATMか近くの他の銀行などのATMを使わざるを得ない。昼食などの買い物がてらとなれば、コンビニが便利である。メインバンクのATMまで行く費用や手間を考えると、手数料はいたしかたないとの認識だ。

 そういえばメインバンクの支店にはずいぶんと足を運んでいない。出金はコンビニなどのATMを使い、送金などはネットで行っているためである。銀行の店舗も縮小傾向にあるようだが、コスト削減だけではなく、これはネットでの利用拡大も影響していよう。

 ただし、銀行には融資という重要な業務がある。個人の口座管理はネットに移行してこようが、融資についてはどうなってくるのであろうか。これを考えるとある程度の店舗は残さざるを得ないのかもしれない。

 日銀が多くの地方に店舗をおいているのは何かあった際にも現金が全国に行き渡るようにするためというのがひとつの目的のようである。これは民間銀行にもいえることで、非常時にはATMなどは使えなくなる恐れもあり、そうなると店舗が頼りになる。このため、店舗を完全になくすことはできないことも確かなのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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