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第二次補正予算の予備費は10兆円も本当に必要なものなのか、すべての使い道をいずれはっきりさせるべき

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大に対応するための第二次補正予算案に計上された10兆円の予備費に対して、野党からは額が大きすぎる上、使いみちが恣意的になりかねないと批判が相次いだ。

 これに対して麻生財務相は8日、衆院本会議で、第二次補正予算案審議に先立ち財政演説を行い、10兆円を計上した予備費の使途について説明した。

 予備費のうち、新型コロナウイルス感染拡大の第二波、第三波が襲来し事態が大幅悪化した場合に、少なくともその半分の5兆円程度の予算が必要となるとの考えを示した。

 具体的には雇用調整助成金など雇用維持や生活支援の観点から1兆円、次に持続化給付金や家賃支援給付金など事業継続の観点から2兆円程度、さらに地方自治体向け医療・介護等の交付金など医療提供体制の観点から2兆円を挙げた(8日付ロイター)。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、緊急事態宣言が出され、人や物の移動が制限された。これにより飲食業、観光業、娯楽産業など幅広い業態に影響を与えたばかりでなく、景気そのものも記録的な落ち込みとなった。

 これに対する支援策が第二次補正予算にも盛り込まれ、過去最大級の補正予算となった。それだけでなく、それに伴う国債の増発もやはり過去最大級となっていた。

 たしかに平時ではなく非常時であり、その非常時対応のためには臨機応変に予算を配分する必要が出てくるかもしれない。あわてて予算案を計上して、それを審議して採決を待つ間に事態がより深刻化する懸念はある。

 緊急事態宣言が出された当初は、このまま大恐慌に突入かといった懸念すらあった。先行き不透明感が強く、その非常時の対応は政府の財政支援策に頼らざるを得なかった。

 だからといって10兆円もの予備費が果たして必要なのかどうか。株価が急速に回復し、それを経済指標の改善が後押しするような状況となると、新型コロナウイルスによる影響は大きくとも一時的なもので、自粛が徐々に解除されれば、以前の生活に戻れるという可能性もみえてきた。

 非常時には10兆円でもいずれ必要だとの認識もあったかもしれない。しかし、少し冷静になると10兆円もの金額を政府に委ねて良いものかという見方は当然出てこよう。例えば、アベノマスクと呼ばれたものへは野党ばかりでなく、我々も不信感を抱いている。

 二次、三次の感染拡大の可能性はありうる。そのための対策が求められる可能性も高い。しかし、それでも10兆円もの資金が政府の裁量に任せられてプールされている状態はいかがなものであろうか。むろんそれがどのように使われたのかをはっきりさせ、使われなかった資金は国債の償還に充てるなりすれば問題はないとは思うのではあるが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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