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FRBは2022年までのゼロ金利政策の維持を表明、狙いは長めの国債利回りの低下を促すことか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想された通り、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%のまま据え置き、ゼロ金利政策を維持することを全員一致で決定した。

 3月に再開した量的緩和政策については、米国債の月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)の同400億ドルの買入を当面維持することも決定した。

 そして、少なくとも2022年まで金利をゼロ近辺に維持するとの見通しも示した。

 その根拠となるのが、3月に公表を止めていたいわゆるドットチャートとなる。ドットチャートとはFRBの正副議長や理事、地区連銀総裁による参加者17人が、政策方針と景気見通しをそれぞれ提示するもの。

 3月は新型コロナウイルスの感染拡大で先行きの不透明感が強すぎたこともあって、ドットチャートの公表は異例の見送りとなっていたことで、12月以来(ドットチャートは四半期毎)となった。

 そのドットチャートによると2021年末までFF金利がゼロ付近で維持されると17人全てが予想し、15人が2022年末までゼロ付近で据え置かれるとの見通しを示していた。この部分を強調したものと思われる。

 市場で注目していたのは、FRBが日銀のようなイールドカーブ・コントロールを採用するのではないかという点にあった。

 パウエル議長はイールドカーブ・コントロールについて、ブリーフィングを受けたことを明らかにした。つまり事務方からの説明があったようである。

 イールドカーブ・コントロールというのは、長期金利も中央銀行が誘導しようというものである。FRB内にもその効果に疑問を持つ向きもいるようで、ましてやマイナス金利の導入もよほどのことがない限りは考えづらいものとなる。

 今回、少なくとも2022年まで金利をゼロ近辺に維持するとの見通しも示したことで、これもひとつのイールドカーブ・コントロールもどきとなる。米国債の買入れとともにより長い期間の金利に低下圧力を加えようとするものであり、こちらのほうが中央銀行の金融政策としては適切ではないかと思う。

 パウエル議長は「米経済の先行きは極めて不透明だ」として、「利上げについて考えることすら考えていない」と言明した。それほど米経済には重大なリスクに直面しているとの認識を示した。ただし、利上げを検討しろとまでは言えないものの、ひとつの方向ばかり見据えるというのもリスクがあるのではないかと個人的には思う次第。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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