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第二次補正予算に伴う巨額の国債増発

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大に対応する今年度の第二次補正予算案を27日、閣議決定した。一般会計の追加の歳出は総額31兆9114億円と、補正予算としては過去最大の規模となる。これは国債の増発によって賄われる。赤字国債は22兆6124億円、建設国債を9兆2990億円発行する。さらに「財政投融資」などを加えた財政支出は72兆7000億円規模となる。財投債が32兆8000億円発行される。

 この二次だけで過去最大規模の補正予算となる。これにより第二次補正予算に伴う国債の増発額は64兆7114億円もの大きさとなった。このうちカレンダーベースの市中消化額の増額分は59兆5000億円、第二非価格競争入札分が1兆80億円、前倒し発行分を使った年度間の調整分が4兆2034億円となる。カレンダーベースの増額の振り分けとしては下記となる。

40年債、5000億円6回とこちらは変更なし

30年債、7月以降は毎月9000億円(当初予算比2000億円増、一次補正比1000億円増)

20年債、7月以降は毎月1.2兆円(同3000億円増、同2000億円増)

10年債、7月以降は毎月2.6兆円(同5000億円増、同3000億円増)

5年債、7月以降は毎月2.5兆円(同6000億円増、同4000億円増)

2年債、7月以降は毎月3.0兆円(同1兆円億円、同6000億円増)

短国1年物:7月以降は毎月3.5兆円(同1兆7000億円増、同1兆1000億円増)

短国6か月物:年間45.6兆円(一次補正後35兆6000億円増)

物連:四半期毎2000億円(当初予算比2000億円減、一次補正比1000億円減)

 市中消化の増額だけで60兆円規模となるため、中短期主体にダイナミックな増額規模となる。特に中長期ゾーンの一回あたりの発行額は過去最高規模かとみられる(のちほど確認します)。

 これを市場は織り込み済みだったとは思えないものの、日銀の国債買い入れがバッファーと認識されてか、債券市場にそれほどの動揺は起きなかった。相場に「もしも」は禁句かもしれないが、日銀の異次元緩和による国債買い入れとイールドカーブコントロールがもし存在しなければ、これを受けて債券相場が大きく下落してもおかしくはなかった。

 日本だけでなく米国も大規模な経済対策とそれによる国債の大量増発があっても米国債が大きく売られることはなかった。こちらもFRBによる無制限の国債買い入れ宣言が需給悪化の懸念を払拭させているのかもしれない。

 それでも多額の国債発行が、中央銀行の国債買い入れによって需給バランスが維持されている状態は決して健全とはいえない。財投債はともかく、建設国債と赤字国債は将来の増税によって発行が担保されているという事実も忘れるべきではない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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