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3月は海外投資家による米国債保有高が過去最大の減少に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 米財務省が5月15日に発表した3月の国際資本収支統計における米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、海外投資家による米国債保有高が前月比で過去最大の減少幅となった。

 2月には海外投資家による米国債保有高が過去最高額となっていたが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、キャッシュ化の動きが強まり、米国債も売られた。米10年債利回りは3月9日に過去最低の0.31%に低下したが、その後売り圧力を強め、18日には1.2%台に上昇した。その後は低下基調となり、月末は0.6%台となっていた。

MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES

 多くの国が米国債の保有残高を落としていたなか、日本はさらに増加させていた。3月における米国債保有額は1兆2717億ドルとなり、前月比で340億ドル増加させ、引き続きトップを維持した。これに対して、2位の中国は1兆816億ドルとなり、前月比で1070億ドルもの減少となり、日本と中国の米国債残高の差はさらに拡大した。

国、米国債保有額、前月比(単位、10億ドル)

日本(Japan) 1271.7 +3.4

中国(China, Mainland) 1081.6-10.7

英国(United Kingdom) 395.3-7.9

アイルランド(Ireland) 271.5-11.2

ブラジル(Brazil) 264.4-21.5

ルクセンブルク(Luxembourg) 246.1-14.7

香港(Hong Kong) 245.3-4.5

スイス(Switzerland) 244.6 +0.9

ケイマン諸島(Cayman Islands) 207.2-12.2

ベルギー(Belgium) 206.1-11.9

 中国発の新型コロナウイルスは中国にとどまらず、日本を含めたアジアから欧米に急速に拡がり、パンデミックの様相となってきた。これを受けて2月はじめに1.65%あたりまで上昇していた米10年債利回りは、リスク回避の動きや、FRBによる利下げなどから、2月いっぱいは低下基調が続いた。つまり米国債は買い進まれ、3月9日に米10年債利回りは過去最低の0.31%まで低下した。

 その後、リスク回避によるドル需要の強まりなどによるキャッシュ化の動きが進み、金などとともに米国債も売られたのである。18日に米10年債利回りは一時1.2%台に上昇した。FRBは国債などの購入額の目安を無制限に切り替えるなど、中央銀行による積極的な資金供給策などから、次第に米債も落ち着きを取り戻し、月末には0.6%台にまで低下した。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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