繰り返される百年に一度の危機、これは異常かといえば過去の歴史をみるとそうでもない
2008年のリーマンショックに象徴される金融危機、2010年のギリシャショックを発端とした欧州の債務危機は百年に一度の危機と称された。百年に一度ぐらいしかないほどの金融経済危機という意味であろうが、何度も続くと本当に百年に一度という表現は正しいのかとも勘ぐりたくなった。
しかし、今度こそ本物(?)の百年に一度とされるような経済の危機的状況が訪れつつある。IMFは新型コロナウイルス感染防止のための「大規模ロックダウン(都市封鎖)」を受けて約100年で最も深刻なリセッション(景気後退)に陥ると予想した。感染が長引いたり再来したりすれば景気回復は予想を下回る恐れがあるとの認識を示した。今年の世界GDPを3%減と予測し、大恐慌以来最大の落ち込みとなる可能性が高いとした。
それを示すような経済指標も出てきている。29日に発表された米国の1~3月期GDP成長率は4.8%のマイナスとなった。4~6月期には年率換算で前期比40%減と戦後最悪のマイナス成長が予想されている。
欧州連合(EU)統計局が30日発表した2020年1~3月期のユーロ圏の域内GDP速報値によると、物価変動を除いた実質で前期比3.8%減となった。年率換算では14.4%減とデータが公表された1995年以来最悪となった。
市場ではこれまで考えられなかったことも起きている。原油先物価格がマイナスとなる事態が発生したのである。
それ以前にすでに金利がマイナスとなる事態も発生していたが、2000年代の金融市場はかつてないほど異常な状態に陥っているとの見方もできる。ただし、株価をみると欧米の株価指数は過去最高値を更新するなど、経済実態とかけ離れた動きをしていた。
このような危機が何度も訪れるのは異常かといえばそうでもない。むしろ日本では戦後からバブル崩壊あたりまでは、ニクソンショックやオイルショックなどはあったものの、それほど大きな危機的状況には陥らなかったのがむしろ不思議であったようにも思われる。
昭和恐慌といった言葉も残っているように戦前などでは幾たびも危機的状況は起きていた。大恐慌という言葉も出てきたように、今回の世界的規模の危機的状況は第二次世界大戦前の状況に似ている。経済だけでなく政治も同様に思われる。だから第三次世界大戦が起きるなどというつもりはないが、世界の政治経済が変な方向に向かう可能性もないとはいえない。
第二次大戦中の金融市場では金利は抑えられ、国債は大量に発行され、株価も政府によって調整されていた。現在も金利は中央銀行に抑えられ、経済対策のための財源として国債が増発される。日本では株価も中央銀行が下支えているようにもみえる。
緊急時であり、これはある意味いたしかたないと見ざるを得ないものの、政府債務や中央銀行のバランスシートが膨れ上がってきていることも確かである。第二次大戦後、その調整を日本でも行ったが、それは結果として国民の犠牲の上で行ってきた。同じようなことが起きないとも限らないことを一応、認識をしておくことも必要ではないかと思う。