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10日の債券先物の売買高が記録的な少なさに

久保田博幸金融アナリスト
債券先物が上場されている大阪取引所(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 4月10日の長期国債先物(以下、債券先物)の出来高が、いろいろと要因が重なった結果、記録的な少なさとなった。

 その要因のひとつは債券先物の主要な参加者ともいえる海外投資家の売買高が減少していたためである。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による影響を受けて、円債も乱高下した。特にキャッシュ化の動きが一時強まったが、海外投資家がいったん円債のポジションを削減してきた可能性があり、それが債券先物の売買高も減少させてきた。これは海外投資家が主体で動いているとみられるナイトセッションの売買高の推移からも確認できる。

 さらにこの日の欧米市場がグッドフライデーで休場だったこともあり、余計に海外投資家による売買高が減少していた。

 これに国内要因も重なった。7日に政府は緊急事態宣言を発令した。ただし、銀行や証券会社は金融インフラを維持させるため、休業などの対象とはならなかった。それでも新型コロナウイルス感染拡大防止のため、市場関係者も交代でテレワークに移行するなどしていたとみられる。テレワークでも売買は可能ながら、板も見えず、情報が限られたなかにあって、テレワークでの債券先物の売買は難しい。出社していた市場関係者も、この日は日銀による国債買は予定されず、国債の入札は6か月物TDBの予定となり、利付国債の予定もなかったことで、無理に売買をする必要がなかったともいえる。

 このため、10日の債券先物中心限月となる6月限の日中の売買高は3890億円となった。私は毎日の債券先物の四本値を記録している。手入力なのでミスがある可能性があるデータベースではあるが、これを元に遡って調べたところ、3890億円というのは中心限月としては2002年12月30日の3513億円以来の少なさとなっていた。この日は大納会であり、当時は半日立ち会い、いわゆる半ドンであったことを考慮すると、今回の出来高が異様に少なかったといえよう。

 そして、10日のナイトセッションの債券先物の出来高もなんと271億円しかなかった。ナイトセッションといえども多いときは1兆円を超え、少なくとも2000億円程度は出来ていることで、かなり少ない数字となった。私がナイトセッションとして集計したデータで確認するとナイトセッションとして過去最低の出来高となっていた。

 今回の債券先物の記録的な売買高の少なさは、あくまでいくつかの要因が重なったことによるものである。これによって債券先物の売買が今後、減少してくるということにはならないと思う。それでも新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が日本の債券市場に少なからぬ影響を与えていることも確かである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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