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日銀は初のテレビ会議での支店長会議、日銀総裁の挨拶文とさくらレポートを確認

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 4月9日に日銀の支店長会議が開催された。通常の日銀の支店長会議は総裁、副総裁、審議委員、そして理事などの役員や局長などとともに、各地区の支店長や事務所長、さらに海外拠点の事務所長などが集まる。長時間に及ぶ会議となるようで、いわゆる密集・密閉・密接の局地のような状態となってしまう。このため、今回は初のテレビ会議となったそうである。

 日銀のサイトには日銀支店長会議における黒田総裁の挨拶文が9日の午前にアップされた。

 総裁会見では冒頭に次のような発言があった。

 「新型コロナウイルス感染症が拡大し、世界経済の先行きは強い不透明感に覆われている。感染症の拡大防止のため、各国で、外出制限等の措置が取られている結果、グローバルに経済活動が大きく制約されている。新型コロナウイルス感染症の拡大は、わが国経済にも、輸出・生産やインバウンド需要、個人消費の落ち込みなどを通じて、深刻な影響を及ぼしている。グローバルな感染症拡大の収束時期には不透明感が強く、経済の先行きは不確実性が極めて高い。」

 現状を端的に示すものといえる。日本でも政府は7日に緊急事態宣言を発令した。感染が急拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象で実施期間は7日から5月6日までとなる。

 これにより人の動きが制限され、経済活動にも大きな支障が出ることは確かであるが、それよりもまずは感染拡大を防ぐことが最優先となる。

 「この間、内外金融資本市場では、投資家のリスクセンチメントが悪化し、急速に不安定化した。」(日銀支店長会議の黒田総裁挨拶)

 市場でのリスクに対する意識が過剰に強まり、いわゆるリスク資産を売却しキャッシュ化を急ぐ動きが出たり、その反動の動きを強めたりと、かなり不安定な相場展開が続いている。

 「わが国の金融システムは全体として安定性を維持しているものの、金融環境をみると、企業の資金繰りは悪化している。」(日銀支店長会議の黒田総裁挨拶)

 日銀は3月15日の金融政策決定会合で、大企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)・社債の購入や中小企業の資金繰り支援のための金融機関向けの資金供給も拡充することを決定している。

 「日本銀行も、3月の金融政策決定会合において、企業金融の円滑確保と金融市場の安定維持の観点から、金融緩和の強化を行った。企業金融支援のための新たなオペの開始やCP・社債等買入れの増額といった措置をしっかりと実施することで、企業金融の円滑確保に貢献していく方針である。」(日銀支店長会議の黒田総裁挨拶)

 そして、次のような指摘もあった。

 「また、緊急事態宣言が発出されたもとで、日本銀行は、指定公共機関として、金融機能の維持と資金決済の円滑確保といった、中央銀行として必要な業務を継続して行う体制を整備している。」(日銀支店長会議の黒田総裁挨拶)

 金融機能の維持と資金決済の円滑確保という金融システムの根幹をなすところに障害が生じないようにさせることも日銀の大きな役割といえる。

 「日本銀行としては、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。」(日銀支店長会議の黒田総裁挨拶)

 いまは新型コロナウイルスの感染拡大を封じることが重要であり、金融緩和策ではそれを防ぐことはできない。また、経済そのものに今後大きな影響が出ることも予想されるが、いまは自粛が求められている状態であり、景気浮揚策は感染拡大が収まってからとなろう。

 そして、同日に発表された日銀の4月の地域経済報告(さくらリポート)では、全国の9地域すべての景気判断を下方修正した。全地域での引き下げはリーマン・ショック後の2009年1月以来、約11年ぶりとなる。

 新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、下押し圧力の強い状態、もしくはこのところ弱い動きとなっているとの指摘となっていた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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