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米国の雇用は急速に悪化、3月は予想を遙かに超える失業者数に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米労働省が4月2日に発表した3月第4週(3月22~28日)の新規失業保険申請件数(季節調整値)は664万8000件となった。既往最高水準となった前週の330万7000件からさらに334万1000件増えてその約2.0倍となり、過去最高水準を更新した。

 さすがに金融市場もここまでの増加は予想していなかった。ただし、これが発表された2日の米国株式市場はサウジアラビアとロシアが減産で近く合意するとの見通しから原油価格が上昇したことで。市場心理が好転したことで結果は買われていた。それでも、ここまでの新規失業保険申請件数の増加は無視できない。

 米国の雇用をみる上で最も注目されているのが米雇用統計となる。新規失業保険申請件数が発表された翌日の3日に3月の米雇用統計が発表された。

 米労働省が発表した3月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、ベンチマークともいえる非農業雇用者数が前月比で70.1万人減少した。市場予想が約10万人台前半の減少となっていたことで、こちらも市場予想を遙かに上回る雇用の悪化が示された。非農業雇用者数の減少そのものも2010年9月以来、9年半ぶりとなる。

 米雇用統計の調査対象期間は毎月12日を含む週となっており、3月の米雇用統計の調査対象期間は、新型コロナ感染拡大の影響で3月の後半に広がった事業・学校閉鎖の前であった。その後、情勢はさらに悪化した。

 上記の新規失業保険申請件数をみても15日~21日に330万7000件、3月22~28日は664万8000件となり、2週間だけでも1000万人近くが失業保険を申請しているのである。

 3月の失業率は4.4%と前月から0.9ポイントも悪化したが、失業率は4~6月に10%を超えるとの見方が強まっている。

 日本でも政府は非常事態宣言を出す。米国のニューヨーク州でのロックダウン(都市封鎖)などとは異なる。しかし、それでも異動等が制限されることは確かであり、米国と同様に飲食産業や宿泊、レジャー産業などに今後も影響がさらに拡がることも考えられる。

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大のよる経済への影響は、リーマン・ショックや欧州の信用不安とは全く異なる性質を持つものとなる。相手がウイルスだけにそれに対処するためには感染拡大を防止するか、感染の勢いを少しでも止めることが求められる。

 それは結果としてその期間の経済活動を停止させざるを得ない。その期間の国民生活に少しでも支障が出ないようにするための対策(セーフティーネット)がまず求められる。経済機能が低下している最中に通常の景気拡大策を打つようなことはむしろ逆効果になりかねない点にも注意すべきとなる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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