景況感を示し速報性のある日銀短観、今回、新型コロナウイルス感染拡大でどこがどう悪化したのか
日銀は1日、企業短期経済観測調査(短観)を発表した。日銀短観とは、日銀が年に4回、業況感に関しての調査表を直接企業の経営者に送り、それを記入してもらい、回収して経済観測をまとめたものとなる。短観は、サンプル数も多い上、日銀が相手ということもあって回収率も高く、数多くある経済指標の中でも注目されている。短観は他の経済指標に比べて、速報性に優れ、企業が認識している足元の業況判断とともに先行きの業況についてどのような予測をしているのかを見るためにもたいへん貴重な指標となる。
調査期間は2月25日~3月31日となっているが、今回の調査は先月上旬までに7割の企業が回答を済ませているとされ(2日付けのNHKニュースより)、新型コロナウイルス感染拡大の影響は数字に現れているものの、事態はそこからさらに悪化している。ちなみに調査表を直接企業の経営者に送られているが、経営者が自ら記入するというよりも関連部署の担当者が記入していると思われる。日銀短観は昔、内容の流出騒ぎもあったことで、現在は厳重に管理されており、日銀総裁もその内容は発表当日に知らされると言われる。
短観の数字のなかで、ニュースなどで良く取りあげられ、ベンチマークともなっているのが大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)である。今回はこれがマイナス8になった。マイナスに転じるのは2013年3月以来の7年ぶりとなる。2013年4月に日銀は量的・質的緩和策、いわゆる異次元緩和を決定している。これがアベノミクスの大きな柱となっていたことで、アベノミクス以前に戻ったと評するメディアもあった。
大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)の2019年12月の前回調査結果はゼロとなっていたことで、今回は8ポイントもの悪化となった。事前予想はマイナス10程度となっており、そこまでは悪化しなかったものの、マイナス幅は7年3か月ぶりの大きさとなった。先行きについてもマイナス11となっており、さらなる悪化を予想している。
大企業「非」製造業のDIはプラス8と前回から12ポイントの悪化となった。先行きはマイナス1との予測となっていた。
前回と比べて今回特に悪化したのは、非製造業のなかの対個人サービスの前回からの31ポイントの悪化、そして宿泊・飲食サービスの同70ポイントの悪化の59となった。59という数字は過去最低の数字となった。これは中堅、中小企業でも同様の落ち込みとなっている。
このように新型コロナの感染拡大を受けたインバウンド需要の減少のほか、イベントや外出の自粛などによる消費低迷の影響があらわれている。今後は石油価格下落の影響、そして欧米での新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、世界的に経済活動が停滞することによる影響も出てくるものとみられる。
そして、短観では想定為替レートも注目されている。今回、2020年度の想定為替レートはドル円で107円98銭となっているが、1日現在でドル円はすでに107円台前半に下落していた。ここから大きくドル円が下落(円高進行)となると、さらに今後の景況感が悪化する可能性もある。