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米国の新型コロナウイルス感染者が世界最多に、市場には新たなリスク要因に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスを巡る状況は刻々と変わってきた。中国の後、韓国やイタリアなどでの感染者数の急増が起きたが、いつのまにか感染者数の最多が米国となっていた。

 米国時間の3月26日午後3時(西海岸時刻)時点で米国の新型コロナウイルス感染者は82404例となり、中国の81789例を超え、感染者数は世界最多になった。

 これは検査範囲の拡大などが影響してくるとはいえ、GDPなどでみて、世界一位を争う中国と米国で、新型コロナウイルスの感染者が増加したという事実は、世界経済を取り巻く状況において、新たなステージ入りしたとの見方もできるのではなかろうか。

 それ以前に、すでにイタリアや英国などの欧州での感染拡大も起きており、欧州を含む、大きな経済圏がまさに機能停止状態に陥っている。

 30日付日経新聞の記事によると、新型コロナウイルスの感染拡大で、日本のメーカーの生産への影響が広がっているそうである。日本経済新聞が主要な製造業各社に取材したところ、回答企業の半数が米国と欧州の工場で生産を停止していることが分かったとある。当然ながら、日本企業への影響も大きいものとなる。

 日本国内でも感染は拡大しつつあり、首都圏のロックダウン(都市封鎖)も現実味を帯びつつある。

 これまではどちらかといえば、インバウンドに絡んだ企業、旅行や運輸などに絡んだ企業への懸念が注目されていた。しかし今後は欧米の経済活動の機能低下による影響も危惧され、国内の人と物の動きの低下とともに、あらたなリスク要因としてみておく必要がある。

 米国株式市場をみると、2兆ドルを超す経済対策が議会も通過したことで26日にダウの引けは1351ドル高となった。しかし、翌27日には米国内での新型コロナウイルス感染者数の増加を受けて915ドル安となり、26日の上昇分がはぎ取られた格好となった。

 2兆円を超える経済対策への期待などより、感染拡大による不安、それによる景気への影響が読めなくなってきたことによる不透明感なども影響していよう。とにかく今回の原因が目に見えないウイルスであり、これは大胆な金融緩和や経済対策で抑え込めるものではない。

 これだけ人や物の動きが低迷し、経済状況も急転しているなか、国民生活への不安感を少しでも取り除くために政府が動くことは当然必要である。規模も必要かもしれないものの、本当に苦しんでいる人達に直接届く政策が求められる。景気対策もいずれ必要となろうが、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止め、国民の安定した生活がおくれるような施策を先行するのが当然のこととなる。

 このような状況が続くなか、金融市場はかなり荒れることは致し方ない。すでにだいぶ荒れてはいるが、この不安が続く限り、これを無理矢理安定させることも難しいことも確かである。

 これを書いている途中に、志村けんさんの訃報が報じられた。「だいじょうぶだあ」と元気に復活されることを願っていたが残念でならない。国民にとって多大の影響力のある方が新型コロナウイルスの感染で亡くなったことで、新型のコロナウイルス感染の怖さがあらためて認識され、少しでも感染拡大にブレーキが掛かってほしいことを願うばかりである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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