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首都圏閉鎖も現実味、金融市場への影響は

久保田博幸金融アナリスト
(写真:REX/アフロ)

 東京都は25日、新型コロナウイルスの感染者が新たに41人確認されたと発表した。小池百合子知事は同日夜、緊急記者会見し「感染爆発の重大局面だ」と述べ、今週末の不要不急の外出自粛を都民に要請した(26日付時事通信)。

 平日についても自宅勤務を推奨し、夜間の外出を避けるよう求めたが、今後の状況次第では、ロックダウン(都市封鎖)などの強力な措置を取らざるを得ないとした。

 もし東京でオーバーシュートと呼ばれているような感染爆発が起きれば、社会・経済への影響は計り知れない。

 すでに中国の武漢だけでなく、ニューヨークやパリ、さらに英国では全土でのロックダウンをジョンソン首相は通達した。今後、同様の事態が東京、もしくは首都圏で起きる懸念が出てきた。

 首都圏が封鎖されるとなれば、国内の経済活動そのものに大きな影響を与えかねない。日本では東京を中心に経済活動機能が集中している。どれだけ経済活動に影響を与えるのかは、私の知識ではわかりかねるため、金融市場への影響に絞ってみてみたい。

 これについては2017年に「シンゴジラのヤシオリ作戦による金融への影響を想定してみた」という自分のコラムで書いたことがあった。ただし、今回はシン・ゴジラのような物理的な破壊が行われたわけではないので状況は異なる。

 証券取引所はコンピューター取引で行われていることで、システム上は支障は出ないとみられる。ニューヨーク取引所は一部、人の手で売買が行われており、こちらは中止された。東京証券取引所や大阪取引所はすでに立会所は閉鎖され、すべてコンピューター取引となっている。

 大手金融機関など都心の本店ディーリングルームでの売買や取引先金融機関などとのトレードはどうなるのか。これはニューヨークにある金融街、いわゆるウォールストリートが現在どうなっているのかが参考になる。ウォールストリートにおける金融機関などでは、エッセンシャルワーカーのカテゴリーに入っているようで、ディーリングルームが閉鎖されるようなことにはなっていないようである。エッセンシャルワーカーのカテゴリーにはいわゆるインフラに関わる人達や医療関係者などが含まれているとみられる。

 金融のインフラの中心である日本銀行も必要な人員は出勤することになると思われる。

 とはいえ、特に債券市場などでは市場の流動性そのものが低下することは避けられないのではなかろうか。ここにきて担保の必要などもあり、国債の需給が逼迫するなどして、レポ市場などにも影響が出ている。日銀が大量に国債を買えば買うほど国債の流動性は低下してしまう。

 債券先物もここにきて急速に流動性が低下し、板が薄いなか、値段だけが大きく動くような事態となっている。債券先物のナイトセッションの取引などみても、どうやら海外投資家が手を引いているように思われる。この状態はしばらく続く可能性がある。

 25日の都心のスーパーマーケットでは生鮮食料品などを含めて品物がなくなる事態となっていたそうだが、こと国債市場については需給は逼迫してくることも予想される。

 ただし、今後は新型コロナウイルス感染への経済対策として、巨額の国債発行圧力が強まることが予想される。国債の前倒し発行分が43兆円あるとはいえ、国債の発行残高が増加することに変わりはない。新型コロナウイルスのリスクが後退した後にあらためて財政リスクが意識される可能性もないわけではない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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