あのドイツも健全財政路線を諦め、7年ぶりに新規国債を発行へ

(写真:ロイター/アフロ)

 ドイツのメルケル政権は21日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、1500億ユーロ(約18兆円)規模の追加予算を計上する方針を固めた。これにより、財政黒字を維持して新規の国債発行をゼロにする健全財政路線の継続は断念することになる(22日付日経新聞)。

 ドイツ政府は23日、新型コロナウイルスの世界的な大流行の影響を緩和するため、この追加予算を含み、総額7500億ユーロ(約89兆7200億円)規模の財政パッケージを承認したと報じられた。巨額の新規国債を発行して賄うとされる(23日付ブルームバーグ)。

 メルケル政権は2019年まで6年連続で新規の国債発行をゼロとしてきたが、大規模な国債発行が避けられない情勢となった。そのメルケル首相が20日に予防接種を受けた際に担当した医師から新型コロナウイルスの陽性反応が出たことで、自主的な隔離措置を取り、自宅勤務に入ったと報じられた。

 ドイツでは基本法(憲法)で均衡財政が義務付けられており、新規国債の発行は国内総生産(GDP)の0.35%までしか許されていない。ただ、自然災害や国が制御できないような緊急事態の場合には例外が認められており、今回はこの規定が適用される(22日付日経新聞)。

 ドイツ債務管理庁は新型コロナ感染拡大の影響軽減に向けた財政措置として、4~6月の国債発行を875億ユーロに増額すると発表した。

 ユーロ圏のなかでは最も信頼度が高いドイツの国債は、6年連続で新規の国債発行がゼロとなっていたこともあり、市場規模がその分縮小していたが、今回の新規国債の発行によって流動性が戻ってくることになる。しかし、すでにマイナスの利回りになっていることもあり、政府にとっては発行しやすいものの、投資家にとってはやや躊躇せざるを得ない。

 いずれにしても、あのドイツまでも健全財政路線を諦めるというのは、まさに非常事態ともいえよう。ただし、新型コロナウイルス感染拡大による影響を少しでも緩和するためとして、積極的な中央銀行による金融緩和策と積極的な財政政策は必要ではある。ただし、これはあくまで非常時の対応であることも意識する必要がある。日銀の異次元緩和も本来は非常時対応のものであったはずであるが。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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