イングランド銀行もFRBに続いて0.5%の緊急利下げ、どうしてこのタイミングだったのか
イングランド銀行は10日に臨時で金融政策委員会(MPC)を開き、政策金利を0.50%引き下げ、年0.25%にすることを政策委員9人の全員一致で決定した。イングランド銀行の利下げは2016年8月以来、3年7か月ぶりとなる。利下げの発表は11日となった。
どうしてこのタイミングであったのか。3日にFRBは緊急のFOMCを開き、全会一致で政策金利を0.50%引き下げることを決定した。この際には事前に他の中央銀行には通知がなかったとされ、協調利下げは意識せず、単独で動いた格好となった。
イングランド銀行の報道官は2日に、新型コロナウイルスの感染拡大について「動向の監視を続けており、世界や英国経済、金融システムに与えうる影響を精査している」と語った。その後、イタリアなどを中心に欧州でも新型コロナウイルスの感染が拡大し、株価も大きく下落するなど、英国内の景気減速懸念も強まってきた。
英国政府も11日に発表した新年度の予算案に新型コロナウイルス対策を盛り込んだ。この政府の動きと呼応したとの見方ができる。
さらに15日にはカーニー総裁が退任する。カーニー総裁としては任期中にあらためて手を打っておきたいとの意向も働いた可能性もある。今回のMPCにはベイリー次期総裁も参加したそうである。
イングランド銀行は利下げに加えて、銀行に貸し出し増加を促すため「TFSME」と呼ぶ長期の資金供給枠組みを新設する。さらに経済環境が良い時期に銀行に自己資本の上積みを課す「景気循環対策資本バッファー」について、1%から0%への即時引き下げも決めた(11日付日経新聞)。
これを受けて11日の英国の金融市場はどうであったのか。英国債は結局、売られ、10年債利回りは0.29%と前日の0.23%から上昇した。この日の米国債が下落していたこともあるが、利下げにはそれほど反応しなかったともいえる。さらにロンドン株式市場もイングランド銀行の利下げで一時買われる場面もあったが、結局、政府の経済対策含めて効果が疑問視されて、結局、続落となった。
利下げで新型コロナウイルスの感染拡大が食い止められるわけではない。株式市場や原油価格が急落するなと市場は大荒れの様相となっており、リスク回避の動きで英国の国債も買い進まれていた。ただし、これは利下げの催促相場というものでもなかった。価格変動リスクがあまりに大きくなり、株式などでの損失をカバーするため、英国債には利益確定売りも入りやすかったともいえる。