今回の株価の急落に対して金融緩和策は有効なのか
9日の米国株式市場ではダウ平均が2013ドル安となり過去最大の下げ幅となった。新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、米国でのリセッションの観測も出てくるなか、今度はオイルショックによって市場が動揺を深めた格好となった。
6日の石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の協議で、サウジアラビアが提案した日量150万バレルの追加減産案をロシアが拒否した。ロシアとすれば米国を意識した行動ともいえたが、これに対し今度はサウジアラビアが自主的な減産も取りやめ増産に転じるとしたのである。価格競争に発展する様相を見せたことから、時間外取引でWTIは一時27.34ドルまで下落する場面もあった。
原油価格の急落で9日の米国のシェール関連企業などの株が下落し、これによって下げが加速されてダウ平均は過去最大の下げ幅となった。欧州の株式市場も石油関連株などを中心に大きく下落した。
この株価や原油価格の下落によって、リスク回避の動きとともに物価への影響も意識されてか、米国やドイツ、英国などの長期金利が大きく低下した。しかし、イタリアやギリシャなどの長期金利は反対に上昇した。ユーロの債務危機を彷彿させるような動きとなっていた。
今回の株価の急落は、長い目でみれば経済実態からみて割高となっていた反動ともいえる。欧米の株価指数は過去最高値を更新していたが、そして同時に米国やドイツなどの長期金利は過去最低水準にまで低下してきた。これまで株価を引き上げ、長期金利が抑えられた背景には日米欧の中央銀行の大胆な金融緩和策があった。
今回のリスク回避の動きに対し、その価格変動(過剰流動性相場の反動)を生じさせるきっかけのひとつともなったのが中央銀行の金融緩和策であったとすれば、ここからの金融緩和策は今回の動きに対してあまり効果的ではないとの見方もできる。また、そもそも副作用を意識すればここからの追加緩和は日銀やECBにとってはあまり現実的ではない。
米国でも同様であり、FRBは17、18日のFOMCを待たず、3日にFRBは緊急のFOMCを開き、全会一致で政策金利を0.50%引き下げることを決定した。タイミングはサプライズで下げ幅もこれまでの0.25%ではなく0.50%とした。ところが、これを受けて3日の米国市場ではダウ平均は785ドル安となったのである。前日2日の株の大幅高で、ある程度の利下げは織り込んでいたとの見方もできるが、利下げが市場に対して効果がなかったとの見方もできよう。
地合が悪化している際には、今回のようなサプライズ的な金融緩和といえども止められないことは過去にもあった。しかし、当然ながら利下げなどの金融緩和策で新型コロナウイルス感染を食い止めることはできない。原油価格の下落による物価安に対しても、利下げが果たしてどの程度の効果があるのか見通せない。
今回の相場の変動は新型コロナウイルスや原油安というブラックスワンの登場によって、行き過ぎた調整との見方もできる。しかし、資産価格を引き上げた要因を考えると、異常な金融緩和策のひとつの副作用との見方もできるのではなかろうか。