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日銀は新たな貸し出し制度の検討を始めるとか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 NHKは5日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で売り上げが落ち込んでいる企業の資金繰りを支援するため、日銀が新たな貸し出し制度の検討を始めたと報じた。

 新型コロナウイルスの感染拡大で売り上げが落ち込む企業の当面の資金繰りを支援する。経営破綻が続出する事態を避けるのが狙いとされる(5日付時事通信)。

 政府はすでに政府は、日本政策金融公庫などを通じて感染拡大の影響を受ける企業の資金繰り支援を始めている。また、今年度予算の予備費を活用し、新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けている事業者に対する資金繰り支援などを含む第二弾の緊急対応策を10日にも取りまとめる予定となっている。日銀はこれと歩調を合わせて、対応に乗り出すものとみられる。

 自民党の岸田文雄政務調査会長は5日の対策本部合同会議で、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う対策として、政府系金融機関に対し、影響を受けている企業向け貸付金利の引き下げを要望した(5日付ブルームバーグ)。

 3月18,19日に開催される日銀の金融政策決定会合では、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受けての対応策が議論される。この際には、直接的な効果も狙える新たな貸し出し制度の検討等が話し合われるとみられる。

 FRBは3日に0.85%の緊急利下げを決定した。その後、カナダ銀行も4日に0.5%の利下げを行い追随した。しかし、日銀やECB、イングランド銀行などはいまのところ緊急の動きは見せていない。

 日銀はFRBよりも早く2日に総裁談話を発表し、今後の動向を注視しつつ、適切な金融市場調節や資産買入れの実施を通じて、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく方針を示した。そして、2日と3日に2016年3月以来、約4年ぶりとなる国債買現先5000億円をオファーした。2日にはETFを1014億円買い入れた。これは1回当たり過去最大規模となる。このようにすでに日銀は動いていた。

 イングランド銀行のカーニー総裁は5日、追加緩和策を決定する前に、新型コロナウイルスの感染拡大が英経済に及ぼす影響の精査に努めると述べた。ちなみにカーニー総裁は3月15日に退任する。次回のMPCは26日の予定で、このときの総裁はアンドリュー・ベイリー氏となっているはずである。

 ECB理事会メンバーのフランソワ・ビルロワドガロー仏中銀総裁は2日に、新型コロナウイルスの感染拡大で対応が必要になればECBには景気を下支えする用意があるが、現時点で追加措置は不要だとの認識を示した(2日付朝日新聞)。

 ECBの政策理事会は12日に予定されている。こちらも前任のドラギ総裁が緩和策を極めてしまった感もあって、追加緩和には積極的になりづらい。日銀と同様に通常の利下げ等の緩和策ではなく、現実に即した対応を検討してくることも予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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