新型コロナウイルスの感染拡大による世界的リスクに対する中央銀行や政府の対応策

(写真:アフロ)

 25日の東京株式市場では日経平均が一時1000円を超す下落となった。これは新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したことによるものであった。しかし、その懸念はずいぶん前からあったはずである。それにもかかわらず米国株式市場ではいったん売られても切り返し、指数は最高値を更新するなどしてきた。ところが、24日の米国株式市場ではダウ平均が1031ドル安となり過去3番目の下げ幅となった。これが本格的な調整のきっかけとなる可能性がある。

 24日の米国株式市場の下落は、新型コロナウイルスの感染が韓国やイタリアにも拡がっていることがきっかけとなった。これを受けて、アジアや欧州の株式市場が大きく下落し、米国株式市場も連鎖的に大きく売られ、25日の東京株式市場にも引き継がれた格好となった。

 新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への影響も懸念され、24日の原油先物も大きく下落した。また、リスク回避の動きから金の先物は上昇し、清算値ベースで2013年2月以来約7年ぶりの高値更新となった。

 外為市場では、今回は比較的素直に円が買われ、ドル円は21日に112円台をつけていたのが、110円30銭あたりまで大きく下落した。これは見方によれば19日から20日にかけて110円あたりから112円台に急伸した反動ともいえる。ここからのドル円の動きの予測は難しい。

 24日の米国債券市場では30年債利回りが1.8%台に低下し、過去最低を更新した。米10年債利回りは1.35%あたりに低下し、2016年7月6日に付けた1.32%に接近した。

 25日の日本の債券市場では先物は上昇して153円台を回復し、10年債利回りも低下しマイナス0.1%台をつけた。

 米30年債利回りが過去最低を記録した背景には、FRBによる利下げ観測の強まりもある。FRBは年内の金融政策は変更なしがコンセンサスのようにみえたが、そこから年内少なくとも2回程度の利下げを織り込みにきている。

 日銀の黒田総裁も新型コロナウイルスが日本経済に及ぼす影響への対応が求められる場合には、日銀として必要な措置をとれるよう「万全を期していきたい」と述べた。つまり必要があれば追加的な金融緩和に踏み切る姿勢を示した。

 このまま世界的な景気への影響が危惧され、株価が大幅に下落するなどした際には、危機的な状況と判断され、日米欧の中央銀行が協調して対策を実施する可能性は当然ありうる。

 しかし、特に日銀やECBにとっては実質的な追加緩和余地は限られる。仮にマイナス金利の深掘りを行って、その副作用にも目を配る政策を取ったとしても、その効果よりも副作用を市場が意識してしまう懸念がある。

 このため、ここにかなり慎重にならざるを得ないところではなかろうか。利下げなどよりも、まずは協調して臨時の資金供給などを行って、市場の動揺を抑えることが必要となろう。

 新型コロナウイルス拡大を阻止するため、もしくは感染者への対応のための具体的な政策も求められよう。こちらは財政が絡んだ対策となるが、政府にとっては景気対策などよりも優先してすべきことは多いはずである。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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