日本の送金サービスは変わるのか
12日付けの日経新聞に『銀行の送金手数料にメス 公取委「半世紀不変」を問題視』との記事が掲載された。これによると資金決済のための銀行間ネットワークシステム「全国銀行データ通信システム」を使った「銀行間送金手数料」が、システムが稼働した1973年以降、50年近くも変わっていないことを公正取引委員会が問題視しているとか。
たしかに銀行間での送金に掛かる手数料は大きく感じる。それが50年近くも変更されてこなかったことが問題視されるのは、むしろ遅すぎるぐらいであろう。
何故このタイミングで問題視されてきたのか。首相官邸で開かれている未来投資会議「第4次産業革命の進展に伴う決済インフラのあり方」では、3月の公取委の報告書をベースとして4月に議論を始める予定とされ、そこにこの手数料問題も含まれる可能性があるためのようである。
日本でのいわゆるフィンテックの遅れの原因としても、この手数料問題が影響しているとの認識のようである。キャッシュレス決済において、スマホ決済業者と加盟店との資金のやり取りで、この手数料が大きな負担になる。ここを軽減させないことには、小額でのキャッシュレス決済が国内で拡がる障壁になりかねない。
日経新聞の記事では、日本の金融インフラは近年、海外と比べて技術革新の遅れが目立っているとの指摘もあった。これについては日本の金融機関のシステムのスタートが早かったことが、むしろネックとなってしまっている感もある。
全国銀行協会(全銀協)は2018年10月から、24時間365日いつでも他行口座にお金を即時に振り込めるモアシステムという新システムを稼働させたが、欧米ではさらに進んで、「携帯電話番号送金」サービスの導入も進められている。
携帯電話番号送金サービスとして、英国の「Faster Payments Service/Paym」、南アフリカの「Real-Time Clearing」、スウェーデンの「BiR/Swish」、米国の「Zelle」などがあり、主に個人間送金に同サービスが利用されている。
しかし、日本では昨年1月にみずほ、三井住友、三菱UFJの3メガバンクが検討していた携帯電話番号を使った個人間送金サービスの計画を中止している。銀行口座を使うと銀行間送金手数料がネックとなってしまうことも理由となっている可能性がある。
銀行としては銀行間送金手数料の実質引き下げとなれば、収益にも影響しかねない面はある。それに対して口座維持手数料の導入なども検討課題として上がっている。
我々にとっての利便性も大事だが、銀行取引にセキュリティ面でも費用負担が掛かっていることも認識する必要はある。銀行口座を通さない携帯電話番号送金サービスもあるが、やはり銀行口座を使う方が便利で安心な面もある。このあたりを含めて、今後の未来投資会議「第4次産業革命の進展に伴う決済インフラのあり方」の議論なども注意していく必要がありそうである。