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市場の注目度が後退したダボス会議、昔の注目度はもっと高かった

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が21~24日、スイス東部ダボスで開かれる。世界経済フォーラム(WEF)とはスイスのジュネーブに本部を置く非営利組織で、経済学者のクラウス・シュワブ氏が1971年に設立し、世界的な課題を官民の協力で改善することを目的としている。

 ダボス会議には、各国政府のトップや企業の経営者など世界各地から2800人を超えるリーダーたちが参加する。今回は環境問題が主なテーマになっているようで、米国のトランプ大統領が参加してスピーチすることも話題になっている。

 あのトランプ大統領がわざわざスイスまで出向いて、スピーチをするとなれば、環境問題に真剣に取り組む姿勢を示すというよりも、今回の米中貿易交渉が第1段階の合意に至った成果などをアピールし、当然ながら、今年の大統領選挙を睨んだものとなっていた。

 このダボス会議への市場からの注目度は以前に比べると後退しているようにも思える。かつては、誰が今回は参加するのかと市場参加者からの注目度は高かった。というのも、通常の講演などとは違い、ここでは膝をつき合わせての小会議などもあり、この会議に参加後、事態が大きく変化することもあったためである。

 個人的に最も印象に残っているのは、1999年のダボス会議であった。1998年末に資金運用部ショックと呼ばれる日本国債の急落があった。当時、国債を大きく買い入れていた資金運用部の国債買入にブレーキが掛かる兆しが見えてきたところに、長期金利が大きく低下した反動も加わって、国債が急落し、長期金利が跳ね上がったのである。

 運用部ショックという言葉が残るほどの急落ではあったが、当時の宮沢蔵相や速水日銀総裁は比較的冷静な対応をしていた。しかし、ダボス会議後に事態が急変する。日本の政府関係者からなんとかしろとのプレッシャーが強まったのである。

 これはダボス会議に出席していた当時のルービン米財務長官から、日本から出席していた自民党の関係者に、日本国債の暴落により、日本の生保が保有している米国債を益出しのため売却する懸念が示されたためとされている。

 これにあわてた政治家が日銀に対して国債引受を検討すべきと発言するなどしたのである。日銀としては財政法で禁じられた国債引受を飲むことはできない。結局、日銀が出した答えが、1999年2月の金融政策決定会合で決めた「ゼロ金利政策」であった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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