過度な金融緩和策の修正が可能なのかが来年の課題に
2019年の日本と米国、ドイツの10年債利回りの動きをみると、9月上旬にむけて低下基調であったのが、そこからトレンドが変わり、上昇基調に転じていた。
米10年債利回りは9月3日に一時1.42%まで低下し、過去最低の1.31%に接近した。日本の10年債利回りは9月4日にマイナス0.295%とマイナス0.3%に迫った。ドイツの10年債利回りも9月3日にマイナス0.71%をつけていた。
なぜ米欧の利回りが低下していたのか。この背景にリスク回避の動きがあった。米中の関税合戦が繰り返され、これによる世界経済の減速懸念が強まった。英国のEU離脱の行方が不透明となり、これもリスク回避となり、安全資産である国債が買い進まれた。
日米欧の中央銀行による金融緩和策への期待も加わっていた。FRBは1月に利上げ停止を示唆し、7月と9月、そして10月のFOMCで予防的な利下げを行った。9月のECB理事会でドラギ総裁はドイツなどの反対を押し切って、マイナス金利の深掘りを含む包括的な金融緩和策を決定した。日銀もマイナス金利の深掘りの可能性を示唆していたが、金融市場がしっかりしていたこともあり、限られた切り札を切ることはなかった。
ところが、金融市場では次第に中央銀行の金融緩和策の限界が意識され始めた。マイナス金利の副作用なども懸念されるようになった。市場から中央銀行に対する過剰な緩和期待が後退し、日米欧の中央銀行の取り巻く環境が9月上旬あたりから変化してきたのである。
日米欧の長期金利は次第に反発基調となり、米10年債利回りは1.9%、ドイツの10年債利回りはマイナス0.2%近くまで、日本の10年債利回りは12月に入りプラスに転じてきた。
米国とドイツ、そして日本の10年債利回りのチャートを確認すると、2018年10月あたりからの利回りの低下トレンドがこれによって終了し、あらたなトレンド、この場合は利回りの上昇トレンドが形成されつつある。
この利回りの上昇トレンドの要因としては、米中の通商交渉が進む兆しがみえたこと、英国の総選挙の結果、保守党が勝利して不透明感が後退したこと、これらによる景気後退リスクも緩和され、過度に低下してしまった長期金利に調整圧力が加わったともいえる。
中央銀行のマイナス金利などによる副作用が意識され、緩和策が修正されるのではとの観測も出てきた。スウェーデン中銀のリクスバンクによるマイナス金利政策の解除なども影響していよう。果たして日米欧の中央銀行は異次元緩和の修正ができるのか。これが2020年の長期金利の動向を決定する大きな要因のひとつになるとみられる。