ブレイナードFRB理事が指摘するリブラの危険性

左がブレイナード理事(写真:ロイター/アフロ)

 FRBのブレイナード理事は18日にフランクフルトでの講演で、フェイスブックが計画するデジタル通貨「リブラ」に対する危険性を指摘した。

 ちなみにブレイナード理事は、クリントン政権では大統領副補佐官を務め、ブルッキングス研究所副所長、さらにはオバマ政権では国際担当財務次官を務めていた人物でもある。

 ブルームバーグによると、ブレイナード理事はまず、銀行が提供する不正防止策や政府の預金保険制度などに慣れた消費者にリスクが及ぶと指摘した。

 フェイスブックが計画するリブラはステーブルコインと呼ばれる法定通貨を裏付けとしたデジタル通貨だが、裏付けがあろうとなかろうと、発行するのは民間企業であり、流通に対する安全性について発行体が責任を負う。また、発行体が何かしらの理由で業務ができなくなるなどした際に、そのデジタル通貨を法定通貨に戻すことができるのかという課題もある。

 発行体が民間、国家にかかわらず、デジタル通貨の流通が広がれば、経済規模の小さい国において金融政策にもやっかいな問題が生じかねないと指摘。「多くの点で、ドル化に似たような影響が考えられる」と述べた(ブルームバーグ)。

 ドルがいわゆる基軸通貨となっており、ドルに連動したいわゆるペッグ制を取り入れている国や、ドルが法定通貨のようになっている国もある。そういった国は通貨価値の安定をFRBに委ねる格好となる。デジタル通貨はどうなるのか。これは中央銀行というシステム外のものとなり、もしそれを通貨として使う国が出ると、その価値を安定させるシステムが存在しないことにもなりかねない。

 ビットコイン取引の約半分が何らかの違法な活動と関連していると推計する調査結果を指摘し、デジタル通貨はその便利さゆえに犯罪に悪用される恐れがあると警告した(ブルームバーグ)。

 今回のブレイナード理事の発言のなかで最も気になったのはこの部分であった。ブルームバーグの記事にあったリンク先をみると、この調査結果はオックスフォード大学が出したレポートのようである。これによると「年間約760億ドルの違法行為には、ビットコイン取引の46%が関与していると推定されており」とある。

 ビットコインなどいわゆる暗号資産(仮想通貨)では、多くの流出事件が発生している。このようなかたちで犯罪に利用されているだけでなく、取引そのものもマネーローンダリングなどを含めた違法行為にその多くが利用されているということなのであろうか。

 法定通貨はその価値を安定させ、問題なく使えるようにするためには、かなりの労力と費用も使われていることで、デジタル通貨はその費用を抑えられることも大きな特徴かもしれない。しかし、そこには大きな抜け道も存在する。スウェーデンや中国ではデジタル通貨の利用を目指しているようだが、利便性とリスクが結局、秤に掛けられることになろう。

 ネットを使った法定通貨を使った資金のやり取りはすでに進んでいる。銀行との取引で通帳を使っていない人も多いのではなかろうか。これにもかなりの安全対策が講じられているはずである。

 リブラのリスクは民間企業が通貨を発行・管理することの困難さも示しているように思われる。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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