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日本の長期金利が一時ゼロ%に上昇し、マイナス圏を脱する

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 10日の日本の債券市場では、この日に実施された5年国債入札の結果が低調なものとなったことを受けて、一時10年債利回りがゼロ%をつけ、マイナス圏を脱した。ゼロ%をつけたのは今年3月6日以来、約9か月ぶりとなる。

 9日の欧米の国債は押し目買いなど入りしっかりしていたが、10日の日本の債券市場では先物主導での仕掛け的な売りも入ったとみられる。ここにきて、日米欧の長期金利は上昇基調を強めつつあったことで、売り仕掛けが入りやすい状況にもあったといえる。

 以前にも指摘したが、ここで何故、国債を売らなければならないのか。その理由のひとつにチャートがあった。チャート上からは日米欧の長期金利の低下トレンドはいったん終了した。今回の日米欧の長期金利はやや異常なまでに低下してしまっていたともいえる。その反動、調整がここにきて入りつつある。

 日米欧の中央銀行のここからの緩和手段は限られる。ファンダメンタルズから株価や長期金利が乖離しているとすれば、いずれその調整も起こりうる。そうなると日本の10年債利回りが久しぶりにプラスに転じても何ら不思議ではなかった。

 ただし、今回の日本の長期金利のゼロ%の上昇は5年債入札に合わせて、やや強引に仕掛けてきた可能性もある。債券先物はまもなく中心限月が12月限から3月限に変わる。日本の長期金利が今後、プラスに転じ、定着できるのかは、債券先物の中心限月が3月限に移行した上で、FOMCや米中の通商交渉の行方を確認後ということになりそうである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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