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債券投資家の相場展望

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 11月26日に財務省で開催された国債投資家懇談会の議事要旨が28日に公表された。このなかで参加者による最近の相場動向についての見方が出ていたので、その部分を確認してみたい。

 「最近の国債市場においては、秋口までの、グローバルなイールドカーブの過度なフラットニングの状況から、直近では大分回復してきているが、基本的にはグローバルな金融緩和の状況はあまり変わらないだろうと考えている。」

 日米欧の金利は過度なフラットニングの修正がここにきて入ってきているとの認識である。ただし、中央銀行の緩和スタンスに変更はなく、金利が大きく上昇するとは考えていないとの見方。

 「市場の現状については、夏場までの金利低下が一服し、秋以降はトレンドが変わってきたと考えている。特に、日本銀行による、超長期金利の水準が低いことへの動きや、日銀買入オペの減額の動きから、金利が少し上昇しやすくなってきていると考えている。ただし、今年度の4月、5月の金利水準と比べると、現状でも、まだその水準には達しておらず、中々金利は上昇していない。」

 金利のトレンドが変化してきているとの認識である。まだ上昇余地はあるものの、プラス金利の債券への需要が非常に強いことで上昇にも限度があるとの見方である。

 「足元、残存10年以下の金利がマイナス圏で推移している中で、イールドハンティングの動きから超長期ゾーンへの需要が集まっていると感じる。」

 プラスの利回りとなっている国債へのニーズはイールドハンティングという意味合いからも強い。このため目先としては金利が少し戻る局面があったとしても、再びイールドカーブがフラット化するとの認識か。

 相場の先行きを読むのは難しい。これらの見通し通りとなるのかはわからないが、債券相場を取り巻く状況に大きな変化はなく、イールドカーブが極端なフラット化となった反動はあったとしても、利回りが大きく上昇することは考えにくいというのが大方の見方となっている。

 ただし、上記の一部意見にもあったように、秋以降はトレンドが変わってきたと私もみている。今後も行き過ぎた低下トレンドが修正されるであろうとみているが、その修正が意外に大きくなるという可能性もないとは言えないのではなかろうか。物価が上がりにくい状況にあり、米中の通商交渉などへのリスクも当然ある。しかし、押しつぶされ続けている金利が何かしらのきっかけで大きく反発するというシナリオも念のため、用意しておいても良いのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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