10月30、31日開催の金融政策決定会合における主な意見より

(写真:つのだよしお/アフロ)

 10月30、31日開催の金融政策決定会合における主な意見が公表された。今回はこのなかから気になるところをピックアップしてみたい。

 金融経済情勢に関する意見の最後に下記のような意見が出ていた。

 「世界の投資家が少しでも利回りの高い債券を買い増すことで、世界的な低金利のスパイラルが起きていると考えられ、今後も金利の低下傾向が続く可能性がある。」

 たしかに決定会合が開かれた10月31日に債券先物は154円台に買い戻されていたが、10月に入ってからは日米欧の長期金利ともに上昇してきており、チャート上からは大きな低下トレンドが終了しつつある。今後はむしろ特に期間の長い金利は回復傾向に入る可能性がでてきている。

 物価については下記の意見が現実の見方に近いのではなかろうか。日本の消費者物価指数の前年は縮小傾向にあり、これをしっかり認識する必要がある。もちろんこれで追加緩和が必要と主張したいわけではない。

 「プラスの需給ギャップが物価上昇を支えているが、プラス幅は縮小している。経済の下振れリスクの顕在化によりプラス幅が一段と縮小するリスクに留意が必要である。」

 下記のような比較的素直な意見も出ていた。この意見にも同意である。

 「長短金利操作の導入以降、デフレに陥らないという意味では物価のモメンタムは維持されているが、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムが維持されているとは言えない。」

 そして、金融政策運営に関する意見では下記のような意見が出ていた。

 「長期金利が現状程度で長期間継続する場合、国民ニーズが高い終身保険や年金保険などの商品の提供を維持することが困難となり、生命保険業界としての社会的使命を果たせなくなる可能性がある。」

 「年金や投資信託は、円債運用において、金利が0.1%低下すると数百億円の収益減になる可能性がある」

 長期金利の低下による具体的な副作用に関する指摘である。日銀は追加緩和策として短期の政策金利の深掘りを考えているようだが、それは結果としてイールドカーブ全体のフラット化を招きかねない。国債買入での調節を行っても効果は一時的となろう。このため日銀の利下げによって長期金利も低下してくる可能性が高い。

 最初に指摘したが、日本を含めて欧米の長期金利はここにきて上昇トレンドに転じた可能性が出てきた。この背景には日米欧の中央銀行の緩和策に対する限界が意識されている。市場がそう認識し、長期金利が自然体で戻してくるのであれば、無理に日銀は緩和姿勢を強めるのではなく、長期金利の上昇をある程度容認することで、長期金利操作を含めた政策余地を拡げることも必要ではないかと思う。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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