日銀の追加緩和、無理する必要はない

(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀の黒田東彦総裁は19日、ロイターのインタビューに応じ、「もし追加の金融緩和が必要なら、確実に短期・中期の金利を引き下げる。超長期金利の低下は望まない」と述べた。また、市場が大きく動けば現状の枠組みでも上場投資信託(ETF)の買い入れを増やすことは可能と述べた(ロイター)。

 FRBが出口政策をストップさせて利下げに転じ、9月のFOMCでも追加利下げに転じた。ECBも9月の理事会で包括的な追加緩和策をドラギ総裁が強引に決定した。これに対して、日銀の金融政策決定会合では追加緩和は見送られた。

 FRBの利下げについては市場もかなり織り込みにいっていたこともあり、決定したとみられる。ここに政治的配慮があったかどうかはわからないが、トランプ大統領を全く無視することもできなかったのではなかろうか。

 ECBについてはドラギ総裁の強い意向が働いていた。ただし、ドイツを含めてリセッションの懸念も出ていたことで、追加緩和に踏み切ったとみられる。

 これに対して、日銀も短期金利の引き下げの可能性を示唆していた。その副作用も意識しての国債買入の調整によってイールドカーブのスティープ化も図っていた。ただし、日銀よりも市場のほうが追加緩和への期待に慎重になっていたように思われる。

 慎重との言い方は少し違うかも知れないが、債券市場では少なくとも、短期金利の引き下げ含めて余計なことはやってくれるなとの見方が強い。それでいったい日銀は何をしたいのかというのが本音となろう。

 株式市場や外為市場では、日銀の追加緩和に対して以前ほど過度に期待するようなことはなくなってきている。特に外為市場では日銀の国債買入の減額などへの反応度が以前に比べて大きく低下したというか、ほとんど材料視しなくなっていた。

 東京株式市場も堅調となり、円高の進行もない状況で、日銀としては無理に動く必要はない。黒田総裁による「市場が大きく動けば」という発言も、日銀が市場の動向を気にしていることがわかる。

 この発言によって10月の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切る可能性が高くなったのかといえば、そのようなことはない。

 現状、株式市場も外為市場も落ち着いている。たしかに米中の通商交渉の行方や英国のEU離脱の行方については不透明感も強い。世界経済のリセッションの可能性もたしかにあるが、米国株式市場の動向などみても危機対応が今、求められるとは思えない。

 いまのところ市場が日銀の追加緩和を求めるような動きともなってはいない。ここは無理に追加緩和をする必要性はない。さらに短期のマイナス金利を深掘りし、なおかつイールドカーブもスティープ化させようとするのもかなりの至難の業となる。一時的には対処できたとしても、市場がそれに素直に応じることも考えづらい。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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