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米中貿易協議では多少なり歩み寄ったのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国のトランプ大統領は11日、「貿易協議で良いことが起きるだろう」とツイッターに投稿し、この日の米国株式市場は米中貿易摩擦が和らぐとの期待から大きく上昇し、ダウ平均は319ドル高となった。

 トランプ大統領は中国が400~500億ドルの米農産品を購入することで合意したと述べ、中国の農産物購入拡大を「わが国の歴史上、偉大な農家に対する最大かつ最も素晴らしい合意」だと称賛した。

 中国が農産品の購入で譲歩する一方、米国側が15日に予定していた中国製品に対する制裁関税の引き上げを見送ったことはたしかなようである。

 米国のムニューシン財務長官は14日にインタビューで、米中が第1段階の合意に署名できるよう両国当局者は今後数週間かけて作業すると述べた。トランプ大統領の発言にあった合意とムニューシン財務長官の発言にある合意とは同じものなのか。トランプ大統領の発言にあった合意は口約束と評しているメディアもあった。

 来月チリでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれる。ここで米中首脳会議が行われ、そこで部分合意をしたいようである。

 中国政府の公式声明や主要メディアは合意の事実やその内容について言及していない。それでも香港のデモなどもあり、中国側としても部分合意については飲まざるを得ないという状況に変わりつつあるのであろうか。

 今月15日に予定していた関税引き上げは見送られても、12月に予定している関税引き上げについては米国側は保留している。米国側が第1段階の合意と称しているのは、それが合意されればこの12月からの関税引き上げは行わないとするものなのか。それから交渉を続け、第2段階、第3段階と進むつもりなのか。

 14日の米国株式市場は、中国は合意文書にサインする前に一段の協議を望んでいると報じられるなどしたことで下落していた。

 市場では期待感が先行したようにみえるが、米中は少し歩み寄りの姿勢を示しただけで、部分合意でもまだ意見の隔たりがあるように思われる。それが果たして解消できるのか。

 トランプ大統領としては対中政策を強行に行うことで、来年の大統領選挙も有利に運びたい意向かと思われたが、やりすぎると米国経済への悪影響が出ることも意識しはじめたようである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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