暗号資産(仮想通貨)リブラの致命的欠陥

(写真:ロイター/アフロ)

 10月10付日経新聞の「リブラ、安定性に致命的欠陥」と題する経済教室がなかなか興味深いものとなっていた。書いたのはカリフォルニア大学バークレー校のバリー・アイケングリーン教授。

 リブラの価値はドル、ユーロ、円など主要法定通貨のバスケットに連動する「ステーブルコイン」であるが、これに対してアイケングリーン教授は、事業計画書も金融経済学者でなく技術者の手になるもので、金融経済学者が関与していないことへの懸念を示していた。

 現在使われている法定通貨は中央銀行が発行している。中央銀行はその価値を維持し、安定させ、それがどこでも使えるためのインフラを整備している。実はそれだけではなく、中央銀行には「最後の貸し手」としての役割があり、これが重要であると指摘している。

 最後の貸し手(lender of last resort)という中央銀行の機能は、資金繰りに問題が生じた金融機関に対して、ほかに資金供給を行う主体がいない場合に、文字どおり最後の貸し手として中央銀行が資金の供給を行うことである。

 アイケングリーン教授は、たぶんリブラの設計者は若すぎて、1994年の米国債急落も、メキシコの通貨危機や米カリフォルニア州オレンジ郡の破産も知らないのだろうと指摘しているが、たしかにリブラの設計においてはそのような危機的状況が起きるということは前提にしていない可能性がある。

 いまが安全なのだから、このまま安全性を保てば永遠に危機は訪れないというのは、あまりに楽観的な見方ながらMMTという理論まで登場している現在では、そのような見方をしている人は意外に多いのかもしれない。

 仮にリブラが普及するとしても、それは自国通貨に対する信頼性が欠ける国においてであろうことは想像できる。しかし、途上国などで普及するとその国の通貨価値がさらに下落してしまうことも予想され、その国でもリブラの利用が制限されるという事態となることが予想される。

 国の制度に縛られない自由な通貨というのは、ひとつの理想型かもしれない。しかし、現実にはそのような通貨を民間で作ることはかなり困難となる。ただの紙切れに魔法のような信用力を与えているのが中央銀行という制度である。その信用を維持するためにあるのが中央銀行という存在でもある。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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