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FRBは追加利下げを決定したが、本当に利下げは必要なのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 FRBは18日のFOMCで、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、年2.00~2.25%から1.75~2.00%に引き下げた。7月の利上げに続くものとなる。7対3の賛成多数で決定され、セントルイス地区連銀のブラード総裁が0.5%の利下げを主張し、ボストン連銀のローゼングレン総裁とカンザスシティー連銀のジョージ総裁は利下げに反対した。

 同時に公表された金融政策予測、いわゆるドットチャートによると、会合参加者の17人のうち、2019年末までにさらに1回の追加利下げを見込むメンバーは7人にとどまった。5人は金利据え置きを予測、ほかの5人は適切な政策金利を2.00~2.25%とした。参加メンバー17人の中央値でみると「2019年末までの追加利下げはゼロ回」となった。

 パウエル議長は会合後の記者会見で、「現在進行形のリスクに保険をかける」と述べており、いわゆる予防的利下げの色彩が濃いものとなった。

 金融市場ではすでに0.25%の利下げを完全に織り込んでおり、それに即した決定となった。市場ではその後の利下げの動向を見極めたいとしていたが、パウエル議長は言質を与えず、ドットチャートからは利下げなしの可能性を示した格好となる。

 トランプ大統領はこのFRBの利下げに対して、「Jay Powell and the Federal Reserve Fail Again. No “guts,” no sense, no vision! A terrible communicator!」とツイートしていた。

 大統領からのプレッシャーもあったかもしれないものの、FRBは予防的と言う言葉を使いながら必要なき利下げを行ったことになる。

 足元の米国経済は決して利下げをしなければいけないほど悪くはない。物価についても目標としているPCEデフレーターは1%台ではあるものの、消費者物価指数は2%台にあり、こちらも利下げが必要なほどに物価に下落圧力がかかっているわけではない。

 米国の通商交渉についても、やや楽観的な見方も出てきており、こちらも米国景気があきらかに減速してくるのを確認してから、金融緩和策を行っても問題はないはず。

 FRBの切れるカードには余裕はあっても、それをむやみに使うべきではない。株価や為替に即した金融政策ではないはずであり、政府の意向を反映した金融政策であってもいけない。あくまでファンダメンタルズに即した金融政策でなければならない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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