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米欧の長期金利が反転上昇の兆し?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ここにきて欧米の長期金利が反転上昇してきている。欧州の国債利回りは過去最低を更新し、米10年債利回りも9月3日に一時1.42%まで低下し、過去最低の1.31%に接近後に反転上昇している。日本の10年債利回りも9月4日にマイナス0.295%まで低下して、2016年7月8日につけた過去最低のマイナス0.300%に迫った。大阪取引所に上場している債券先物も3日のナイトセッションで155円40銭をつけて過去最高値をつけていた。その後、長期金利は上昇し、債券先物は下落基調となった。

 日米欧の長期金利がボトムアウトしたとまだ結論づけることはできないが、欧米の長期金利がひとつの節目に差し掛かったところでの反転だけに、その可能性もありうる。

 どうやら今回のこの異常なまでの世界的な長期金利の低下には人為的な動きがあったようにも思われる。人為的というよりもコンピュータ的といっても良いかもしれない。昨年10月以来、ほぼ一方的に日米欧の長期金利は低下していた。これは金(ゴールド)の価格においても同様に、こちらは一方的に上昇していた。

 これらはリスク回避や中央銀行の追加緩和観測によるものとの見方もあり、それも当然ながらあったと思うが、それ以上にアルゴなどによるシステム的な動きが入っていた可能性もある。いわゆる仕掛け的な動きである。

 株式市場やリスク回避で動きやすい円が金利に連動していなかったことからも、それは窺える。すでにマイナス金利となっている日本や欧州では、債券を運用者にとって通常はマイナス金利では手は出しにくい。それにもかかわらず、マイナス金利を深掘りしていたのは、短期的なさや取りの動きとの見方もできよう。

 仕掛け的な動きであれば、その反動も大きくなる可能性がある。英国の同意なき離脱が回避されるとの見方が強まり、米中の通商交渉の再開の見通しなどもきっかけに、長期金利は反発してきた。9日から10日にかけての欧米の長期金利は大きく上昇してきている。

 確かに今後の世界的な景気減速への懸念はあり、米中が急速に仲良くなったり、無事に英国がEUを離脱できたりする可能性は低いと言わざるを得ない。それでも足元のファンダメンタルズと金利の居所に整合性はなく、長期金利の低下が行き過ぎているとの判断も可能である。その調整が入ってもおかしくはない。ここからの日米欧の長期金利の動きにも注意する必要がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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