ある著名なストラテジストが「いずれマイナス金利が普通になって、金利がプラスになっていた時代があったのかとなるかもしれません」と、ある場所での挨拶で述べられていた。

 「世界情勢においても、環境問題においても、世の中の変化が加速していて、体感としてはどうもおかしな方向に変わっている。そう感じている方は少なくないような気がします。ただ、それを止めなかったのも僕たちです。今の世界は僕たち自身が選択したものです」

 これは日本のある映画監督の自分の作品に対するコメントである。ネタバレともなりかねないので、映画の題名はひとまず伏せさせていただくが、その映画を見た方はこれがどういう状況を示しているのかはおわかりであろう。

 確かにいまの気候、ではなく、金利環境は異常としか言いようがない。経済や物価の状況が悪化しているわけではないのに、その不安から、たとえば欧州の国債の利回りはドイツなどが過去最低を更新している。

 米国では2年債と10年債の利回りが逆転するいわゆる逆イールドが形成されている。これは景気後退の前兆として意識されているようであるが、それだけ長い金利に低下圧力がかかっているといえる。

 日本でも債券先物は過去最高値を更新し、10年債利回りは過去最低に接近、20年債利回りがマイナスとなる可能性も出てきた。

 繰り返すが、経済環境からはこんな低い利回りとは整合性はない。それがどうして生じてしまったのか。

 リーマン・ショックや欧州の信用不安といった世界的な金融経済危機を迎えた結果、日米欧の中央銀行は、かつてない金融緩和策を実施した。日本ではそのリスクが後退しつつあるなかで異次元緩和が登場した。

 結果として、市場や為政者は中央銀行の金融緩和策への依存度を強め、正常化に向かったFRBも途中で正常化にブレーキを掛けざるを得なくなった。正常化に向きを変えようとしていたECBもそれをストップ。日銀は正常化には見せないものの、量などでは調整を行っていたが、金利そのものはマイナスに放置せざるを得なかった。

 その結果、世界の長期金利が戻りきれないなかにあって、米中の貿易戦争などが起きてリスク回避の動きを強め、その結果、世界の金利が水没した。こんな異常な状況はいずれ解消されるはずと思っていたが、むしろ状況は悪化するばかり。中央銀行の金融緩和の依存度を強めさせたのは、ある意味、我々の責任でもあったのかもしれない。これが今後どのような結果を生むのか、いまは想像すらできない。