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カンザスシティ連銀総裁による熊(トランプ大統領)に餌(金融緩和)を与えるな発言

久保田博幸金融アナリスト
一番左がカンザスシティ連銀のエスター・ジョージ総裁(写真:ロイター/アフロ)

 23日のジャクソンホールにおいて注目されたのはFRBのパウエル議長の講演であったが、その後すぐにトランプ砲が飛んできて、市場は米中の関税合戦に視線を向けざるを得なかった。

 今回のジャクソンホールでは、イングランド銀行のカーニー総裁も講演し、世界の準備通貨としてのドルの地位が終わり、リブラなどのグローバルなデジタル通貨のような形式がより良い選択肢となるという認識を示した。

 しかし実はパウエル議長やカーニー総裁の講演よりも、より破壊力のあるスピーチをした人物がいた。それは今回のジャクソンホールのシンポジウムの主催者でもあるカンザスシティ連銀のエスター・ジョージ総裁である。

 同総裁は当局者の中で特に利上げを強く主張する最もタカ派ともされているようだが、違う意味でも「鷹派」の女性のようである。

 今回のジャクソンホールのシンポジウムにおける開会の挨拶で、ジョージ総裁は次のような発言をしていた。

 イエローストーン国立公園で以前、観光客が熊に餌を与えたことがあった。しかし、この行為は生態系への影響が危惧され、それを止めさせたことを例にとり、中央銀行もこの教訓を生かすようにと主張している。熊に餌を与えてはいけない。できるだけ熊に出くわさないようにしましょう、とジョージ総裁は主張している。

  Do not feed the bears.

 Whether or not central bankers can actually draw any lessons from this naturalecosystem, I highly recommend while you’re here that you do not feed the bears and avoid encounters with them while hiking in their territory.

 これはかなり強烈なコメントと言わざるを得ない。ジャクソンホールの参加者はジョージ総裁のこの発言にどのような反応をしたのかも知りたい。くすくす笑っていたのか、それとも歓声が沸き起こっていたのか、それともそれは不謹慎な発言だと言っていたのか。特にこのあとの講演で、予防的利下げを示唆したパウエル議長はどう思ったのであろうか。

 言うまでもなく、この熊とはトランプ大統領であり、餌とは金融緩和策であろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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