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米中の関税合戦が深刻化、市場はリスク回避へ

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 23日のジャクソンホールでの講演でFRBのパウエル議長は、米経済の成長持続へ適切に行動するだろうと述べ追加利下げの可能性を示唆した。これはほぼ市場の読み通りとなり、市場参加者はひとまず安堵した。しかし、そのあとすぐに激震が走ることとなった。

 中国政府が、米国の制裁第4弾に対し原油や農産物など約750億ドル分の米国製品に5~10%の報復関税をかけると発表したのである。

 これに対し、米国のトランプ大統領はすぐに動きを示し、2500億ドル分の中国製品に課している制裁関税を10月1日に現在の25%から30%に引き上げると発表した。まさにやられたらやり返すことになった。それだけでは飽き足らず、9月1日に発動されるに第4弾については10%の予定だったが15%を課すと表明したのである。さらにトランプ大統領は米企業に対し中国から事業を撤退させ、米国内での生産を拡大するよう要請した。

 これに対する市場の反応は、当然ながらリスク回避となった。23日の米国株式市場はほぼ全面安の展開となって、ダウ平均は623ドル安、ナスダックも239ポイントの下落となった。米国債は買われ、原油先物は大きく下落した。

 外為市場では条件反射的に円高が進行し、26日の東京時間の朝方にドル円は104円台半ばあたりまで下落した。

 米中通商交渉は進展どころが、関税合戦が深刻化してきた。まさに殴り合いの喧嘩状態となっており、ここからの関係修復もかなり困難にならざるを得ない。

 トランプ大統領は「われわれに中国は必要ない。率直に言えば、中国がいない方が状況はましだろう」とまでツイッターに書き込んでいる。

 この米中の関税合戦が止まらない限りは、中央銀行の緩和策などではほとんどマーケットの火消しの役にはたたないと思われる。当然、米中の関税合戦による世界経済への負の影響も出てこよう。

 日米通商交渉については原則合意となったようだが、これはほとんど材料視はされていない。日本の影響力はかなり低下しているということの現れでもあろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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