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ジャクソンホールでパウエル議長は利下げを示唆

久保田博幸金融アナリスト
イングランド銀行のカーニー総裁とFRBのパウエル議長(写真:ロイター/アフロ)

 米国ワイオミング州の避暑地でもあるジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは、例年市場参加者にとり大きな注目材料となる。今年は特に、追加緩和観測も出ているFRBのパウエル議長の講演が注目された。

 ジャクソンホール (Jackson Hole) とはワイオミング州北西部に位置する谷のことを意味する。このシンポジウムには著名学者などとともに、各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものとなっている。

 今年のカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは現地時間の8月22日から24日に掛けて開催される(日本時間8月23日~8月25日)。

Jackson Hole Economic Symposium.

https://www.kansascityfed.org/publications/research/escp/symposiums/escp-2019

 上記の予定を見る限り、中央銀行のトップによる講演は、現地時間の23日の午前8時(日本時間同日午後11時)に予定されているパウエルFRB議長と同日の午後1時予定のイングランド銀行のカーニー総裁が予定されていた。

 特にパウエル議長が追加利下げにむけてどのような示唆をしてくるのかが、注目された。

 これに先立ちフィラデルフィア連銀のハーカー総裁はジャクソンホールでインタビューに応じ、「当面は現状を維持し、状況がどのように展開するか見極めるべきだと考えている」と述べた。

 カンザスシティ連銀のジョージ総裁はブルームバーグテレビとのインタビューで、「現在の米経済の状況を見ると、まだ機は熟していない。今後の景気減速を示唆する見通しがない限り、さらなる緩和を経済に提供する心構えが私にはない」と述べた。カンザスシティ連銀のジョージ総裁は今回のシンポジウムの主催者でもある

 トランプ大統領などから利下げを求める強烈なメッセージに対し、その必要性はないと主張することで、市場での過度な利下げ期待を緩和させようとしているかのように思われる。

 21日に公表された7月30、31日の議事要旨では、インフレ率が低過ぎるとの懸念を示した複数の参加者が0.5%の利下げを望んでいたことを示唆するとともに、同時に追加利下げを検討している印象を与えることは好ましくないという認識で一致したとある。

 このあたりから読み取れるのは、9月のFOMCでは大幅な利下げは回避し、しかし市場への影響も意識し、0.25%の利下げを決定してくるのではないかと予想される。これもあくまでサイクルの半ばでの調整としてくるのではなかろうか。

 実際に23日にパウエル議長はジャクソンホールで開催中の経済シンポジウムにおける講演で、FRBは足元の景気拡大を維持すべく「適切に対応」すると表明し、利下げを示唆した。9月のFOMCとは指摘していなかったものの、9月に0.25%の利下げを行う可能性が高いと思われる。ここまでは予想通りであったが、その後に予想外のことが起きて、市場は再び米中に振り回されることとなった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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