リスク回避から世界の国債が買い進まれる、やや異常とも思える光景

(写真:ロイター/アフロ)

 7日の日本の債券市場ではベンチマークともいえる債券先物が上昇し、一時154円46銭をつけ、債券先物の中心限月として過去最高値を更新した。この動きについて、東京時間の米債が買われていたことが、ひとつの要因となっていた。

 米国のトランプ大統領が「FRBは大幅で迅速な利下げをしなければいけない」と述べ、追加の金融緩和を改めて要求した。これが米債高に影響していた可能性がある。トランプ大統領はツイッターで「我々の問題は中国ではない。FRBだ」と主張。「我々はいずれにしても勝つが、他国と競争していることをFRBが理解してくれたらもっと簡単だ」と他国の動きに合わせて、金融緩和を急ぐよう促した(7日付日経新聞)。

 どう考えても米国の問題は中国というより米国のトランプ政権そのものにあり、FRBが金利水準を正常化したためではない。責任転嫁も甚だしい。そして、「他国と競争していること」に関しては金融緩和もどうやら含まれるらしい。

 7日に、ニュージーランド、インド、そしてタイの中央銀行が相次いで利下げを決定した。米中の貿易戦争の拡大による世界経済への影響が危惧されての金融緩和策とみられる。今度は中銀の緩和戦争まで引き起こそうとしているようにも思えるが、これらの利下げを受けて、アジア諸国の国債利回りが低下していた。これも7日の日本国債の買い要因となっていた。

 これらの動きは、欧州の国債にも影響を与えた。7日に発表された6月のドイツの鉱工業生産指数は前月比1.5%低下となり、予想を下回った。第2四半期のドイツ経済はマイナス成長となった可能性があるとの指摘も出ていた。欧州域内の景気原作などを受けたECBによる緩和策への期待も加わり、7日の欧州の国債は総じて低下した。過去最低利回りを更新した国が多い。ドイツもマイナス0.59%と過去最低利回りを更新。フランスやオランダも同様にマイナス幅を拡げた。スペインやポルトガルの10年債利回りもそれぞれ0.16%、0.18%となり、これらも、いずれマイナスとなる可能性がある。

 この世界的な国債利回りの低下によって、米国の10年債利回りも7日に一時1.59%と2016年10月以来の水準に低下した。米30年債利回りは過去最低水準に迫った。これにより長短金利差が縮小した。

 現在の世界経済情勢において、何かしら危機的状況が起きているわけではない。危ない橋を渡っている米国と中国が、リスクを世界に向けて撒き散らし、それが市場でのリスク回避の動きとなり、予防的措置として中央銀行が金融緩和を決定、もしくはその準備に取りかかっている。それに先んじて長期金利が低下し、マイナスの利回りとなっている国債が増え続けている状況にある。

 これはどうみても異常な状況と見ざるを得ない。こんな状況、いずれまともなものに修正されるのでとの期待も抱きたいところではあるが、どうやらそのような楽観論は先行きの見方を見誤らせるのかもしれない。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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