米中貿易戦争激化で世界的にリスク回避の動きを強め、日本の国債利回りはマイナス0.2%に低下
2日の米国株式市場では、本来は材料視されるはずの雇用統計にはあまり反応しなかった。7月の米雇用統計では、非農業雇用者数は16.4万人増とほぼ予想通りとなり、時間当たり平均賃金は2か月連続で小幅ながら上昇した。予想の範囲内であったため反応しなかったとの見方もできるが、市場の視線が違う方向に集中していたためとも言えた。
米国は中国からの輸入品3000億ドル(約32兆2300億円)相当に10%の関税を課すと発表したが、この制裁関税に対し、中国外務省は2日、「中国は対抗措置を取らざるをえない」と報復を示唆した。これを受けて米中貿易摩擦が厳しくなるとの懸念が広がり、2日の米国株式市場は下落した。
今回の「第4弾」には消費財が多く含まれることから、中国での生産が多いアップルやナイキは高率の関税が収益を圧迫するとの見方から売られ、中国売上高比率が高いダウやキャタピラーなど、いわゆる中国関連株に売りが入った。「第4弾」は中国だけでなく、米国内の企業への悪影響、さらには米国の消費そのものにも悪影響を与えかねない。
これは米国だけの問題ではなく、欧州の経済にも影響を与えることが予想される。このためECBが早期に緩和策を取ってくるのではとの期待もあり、欧州の国債は買い進まれた。ドイツやフランス、オランダの長期金利が過去最低を記録した。それほど欧州経済は悪化しているわけではないが、そもそも低金利状態から抜けきれなかったことで、マイナス金利が深掘りされるような状況となっている。
これに対して米10年債利回りはプラス圏にはいるものの、2日の米10年債利回りは1.84%まで低下した(3日はさらに低下し1.71%に)。
欧米の国債利回りの低下、円高の進行も加わっての東京株式市場の下落もあり、日本の国債も買われている(利回りは低下)。ただし、10年債利回りのマイナス0.2%は日銀の長期金利操作の下限ともなっていることで、ひとつの節目ではある。5日に10年債利回りはこのマイナス0.200%まで低下している。日銀はマイナス0.2%を下回る利回りを容認するのか、それともいずれ長期金利コントロールのレンジそのものを拡大してくるのか。
FRBは0.25%の利下げに動いた。パウエルFRB議長は利下げを一時的な調整としたが、市場からの利下げ圧力が今後さらに強まることも予想される。ECBも何らかの緩和策を講じてくる可能性がある。円高も進みつつあり、ドル円は105円割れを試すことも予想される。日銀としては何かしら「躊躇なく」行うべき手段を講ずる必要が出てくる事も予想され、長期金利コントロールのレンジの拡大もその候補のひとつとなるのかもしれない。