リブラは世界統一通貨の布石となるか、統一通貨のユーロ誕生との比較

(写真:ロイター/アフロ)

 フランスで開催されていた主要7か国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、米フェイスブックが計画するデジタル通貨「リブラ」の規制のあり方について議論し、早急な対応を取る必要があるとの認識で一致した。規制の枠組み作りに向けて、主要国が動き出した(18日の日経新聞電子版)。

 これをみてもフェイスブックが計画するデジタル通貨「リブラ」に対して、各国が脅威として警戒感を持っていることがわかる。もちろん脅威というより、セキュリティやマネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金への悪用の警戒なども当然あろう。

 SFの世界では宇宙人が攻めてきたことなどをきっかけに世界統一政府ができて、通貨も統合されるといったことが描かれることがある。フェイスブックは世界の約24億人が利用していることで、リブラが普及するようなことがあると、これをきっかけにリブラが実質的な世界の統一通貨になるのではという期待も多少なり、あるのかもしれない。

 現実的には通貨への信用度の高い国でのリブラの通貨としての利用は考えづらく、信用度の低い国では政府が警戒を強めることも予想され、通貨としての普及は難しいのではないかと予想される。それでもこれをきっかけに統一通貨の可能性も多少なり考慮しても良いかもしれない。統一通貨といえばユーロという成功事例が存在することで、それとの比較も面白いのではなかろうか。

 ちなみにイタリアでユーロ導入前に使われていた通貨単位のリラの語源は、古代ローマ帝国での「計り」を意味した「リブラ」と言われている。

 欧州では欧州通貨統合の機運の高まりにより、1972年に欧州為替相場同盟、1979年には欧州通貨制度を創設した。これにあわせて欧州通貨単位が導入された。これがEuropean Currency Unit、つまりECU(エキュー)であった。これは加盟国の為替レートを固定し、将来的には通貨統合をおこなう目的で導入された。1979年3月から1998年12月までヨーロッパ共同体 (EC) および欧州連合 (EU) で使われていた「バスケット通貨」となる。ちなみにリブラも「バスケット通貨」といえるものである。

 ECU(エキュー)が統一通貨の名称にもなるとされていたが、この名称がフランスの銀貨「エキュ」と酷似していたことで、ドイツが統一通貨の名称として難色を示し、その結果として誕生した名称が「ユーロ」であった。

 当時のユーロ参加予定国のそれぞれの通貨とユーロとの為替レートが固定され、1999年1月に欧州の通貨統合により単一通貨であるユーロが導入された。当時のユーロ参加予定国の通貨とユーロとの為替レートが固定された。ユーロの導入に伴って、ECUという欧州連合の公式通貨バスケットは消滅。ただしこの時点では、ユーロは銀行間取引など非現金取引を対象に導入されていたものであり、いわば決済用仮想通貨として導入された格好となっていた。

 2001年9月からドイツでユーロが民間銀行に配付され、銀行ではドイツマルクを回収してユーロを供給することで切り替え作業が進められた。ユーロを導入した国ではそれぞれで2002年の2月あるいは6月までを移行期間として、代金の支払にユーロか旧通貨の使用が認められ、移行期間後は旧通貨の法的効力は消滅した(その後も引き換えは可能となっていた)。

 国そのものが動かない限りは、リブラが世界の統一通貨になることは考えづらい。しかし、リブラはユーロまでの移行途中のECU(エキュー)や決済用仮想通貨のような性質を持っているともいえる。実際に2020年のリブラの発行が可能なのかも不透明ながら、リブラが世界の通貨システムに対し、何らかの影響を与えかねないことも確かなのではなかろうか。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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