あのギリシャの国債利回りが過去最低を記録

(写真:ロイター/アフロ)

 7月8日にギリシャの長期金利は2.014%に低下し、過去最低利回りを更新した。

 この背景のひとつにギリシャの4年ぶり政権交代があった。ギリシャ総選挙が7日、投開票され、最大野党で中道右派の新民主主義党(ND)の議席が単独過半数を獲得した。2015年に反緊縮財政を掲げて登場したチプラス首相は、欧州連合(EU)との対立で世界の金融市場を動揺させた。そのチプラス首相が退陣することになった。

 欧州圏の国債利回りが全般に低下傾向にあったことも、ギリシャの長期金利が過去最低を更新した要因となった。FRBによる利下げ観測に加え、ECBも緩和策に動くのではとの期待が強まり、ドイツやフランス、ベルギー、さらにスペインやポルトガルの長期金利も過去最低を更新していた。これを受けてギリシャの長期金利も低下し、総選挙の結果も加わって過去最低を更新した。

 2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。これを受けて起きたのがギリシャ・ショックである。ギリシャは2009年10月にも政権交代が起きたが、パパンドレウ新政権に変わったことにより前政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。これを受けて格付け会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、ギリシャ国債は暴落した。同様に債務状態が悪化しているポルトガルやスペインなどにも飛び火した。これがユーロというシステムそのものへの危機となり、欧州の信用不安が拡大した。

 ECBの緩和策などもあって欧州の信用危機は後退した。しかし、2015年1月のギリシャでの総選挙において「反緊縮財政」を掲げたチプラス首相が誕生したことで、EUとの対立色を強めることになる。このため2015年7月に向けてあらためてギリシャ・ショックが再発した。7月にギリシャの長期金利は15%近くにまで上昇した。

 ギリシャのユーロ離脱の可能性も強まったが、ギリシャ議会は7月16日に、欧州連合(EU)から金融支援の条件として要求されていた財政改革法案を賛成多数で可決した。そしてギリシャは年金カットや増税などの緊縮実行を受け入れた。これにより、ギリシャのユーロ離脱という最悪の事態は回避された。ここからギリシャの長期金利は低下してきた。

ギリシャの新民主主義党(ND)は今年5月の欧州議会選で第1党になっていた。これを受けて政権交代の可能性が高まり、ギリシャの長期金利は3%を下回り、ユーロ導入後の最低を記録していた。そして今回のギリシャの総選挙の結果を受けての過去最低利回りの更新となったのである。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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