日銀の金融政策への素朴な疑問、現行の緩和政策をいつまで続ける気なのか

(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は8日に3月14,15日に開催された金融政策決定会合議事要旨を公表した。今回は金融政策の基本的な運営スタンスについて議論をみてみたい。

 大方の委員は、「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、2%に向けたモメンタムは維持されていることから、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適切であるとの認識を共有した。

 まず最初の疑問点であるが、日銀は何故「2%」という物価目標を定めたのか。それが日本にあって消費者物価指数(生鮮食料品を除く)の適正値であるのか。グローバルスタンダードだからというだけで、2%という数字に具体的な根拠などはない。それに縛られることによって金融政策そのものが歪められてしまっている。

 一人の委員は、「物価安定の目標」の実現に資するため、現在の金融政策の運営方針を粘り強く続け、経済の好循環を息長く支えていくべきであると述べた。

 すでに6年以上も粘り強く進めた結果、物価目標の達成はまったく見えてこない。さらに債券市場の機能不全、政府債務リスクの希薄化、中小金融機関主体の経営への影響などの副作用が確実に積み上がっている。

 多くの委員は、物価上昇の原動力であるプラスの需給ギャップができるだけ長く持続するよう、経済・物価・金融情勢をバランスよく踏まえつつ、現在の政策のもとで、きわめて緩和的な金融環境を維持していくことが必要であると述べた。

 そもそも現在の金融緩和政策で需給ギャップがどのように能動的に改善されるのか、その道筋を具体的に示してほしい。

 ある委員は、当面は、景気動向を慎重に見極めつつ、金融機関や市場機能に与える副作用についてこれまで以上に留意して、現行の金融緩和政策を維持する必要があるとの見解を示した。

 副作用について留意しなければならないことは、その通り。

 一人の委員は、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、市場の状況に応じて対応できる一定の柔軟性を有しており、市場環境が変化するもとでも、市場機能に与える副作用を軽減しつつ、緩和的な金融環境を維持しやすい政策であると指摘した。

 量の縛りをなくしたことで柔軟性を持ったことは確かであろうが、金利操作という柔軟性については政策委員の判断というより、現場の判断に委ねられているようにみえるが、それも金融政策の柔軟性ということで良いのであろうか。

 この間、ある委員は、現時点では、内外経済の動向についてデータの蓄積を待つ必要があり、現在の政策を継続することが適当であるが、経済・物価を巡る下方リスクが顕在化しているのであれば、政策対応の準備をしておくべきとの認識を示した。

 物価目標の縛りがあるため、このような意見が出てくる。景気などの下方リスクに追加緩和で対処するしかなくなっているのが、現在の日銀の異常な政策となってしまっている。つまり柔軟性はない。

 また、ある委員は、低下した予想物価上昇率を再び高めることの難しさなどを考慮すれば、経済・物価情勢の局面変化に際しては、先制的に政策対応することが重要であると述べた。

 我が国の経済情勢は緩やかに拡大しているとの見方で一致しているようなので、経済・物価情勢の良い方の局面変化に際して、先制的に政策対応する必要はないのか。2%の物価目標が達成されていないから当然という理屈があろうが、2%という物価目標が間違いであったとしたら見方は異なってくる。

 これに対し、ある委員は、2%の実現に向けた経済・物価情勢のメインシナリオは現時点で変わっていないとしたうえで、金融政策は、景気指標の短期的な変動に逐一、機械的に対応するものではなく、こうした基調判断に基づいて運営していく必要があるとの認識を示した。

 2%の実現に向けた経済・物価情勢のメインシナリオは現時点で変わっていないという前提はさておき、確かに金融政策は景気指標の短期的な変動に逐一、機械的に対応する必要はなく、長期的な視野が見込まれる。しかし、市場や政治家は特に急激な株価の下落や円高に対して、日銀の政策に過度な期待をすることも多い。

 別の一人の委員は、需給ギャップのプラス基調に変調がない中にあっては、現行の緩和政策を維持し、景気動向を慎重に見守ることが適当であるとの意見を述べた。

 正論であろうが、現行の緩和政策をいつまで続ける気なのか。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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