世界の長期金利がボトムアウトした可能性、日本の長期金利のマイナス化も行き過ぎか

(写真:ロイター/アフロ)

 米国と欧州の株価指数や日本の主要な株価指数は、昨年のクリスマスあたりを目先の底にして回復基調となっている。この要因として金融政策の修正観測も挙げられていた。FRBの金融政策において正常化にブレーキを掛けるとの観測から、今年の利上げの可能性が後退し、FRBの保有資産の縮小も停止するとの見方も強まった。一部に利下げ観測もあったようだが、さすがにそこまで踏み込むことは予想しづらい。ECBの年内利上げ観測も大きく後退した。日銀は大胆な緩和策を継続しており、さらに踏み込むのではとの一部観測も出ていた。

 ただし、日米欧の金融政策の行方が株価を押し上げたというのはやや疑問も残る。そもそもFRBもECBもあくまで正常化にブレーキを掛けただけであり、それによる実体経済への効果は市場が先読みしていたとしても、それほど大きいようには思えない。

 昨年末からの日米欧の株価の反発は、中央銀行の金融政策の行方を意識したものというより、実体経済の動向の見方の修正によるものではなかろうか。昨年末に向けては欧州や中国経済の景気減速が明らかとなっていたことに加え、米中の貿易交渉のもつれも危惧されていた。欧州や中国の景気減速が、米国にも波及し、世界的な景気減速懸念が強まっての昨年末までの世界的な株価の下落ともいえたのではなかろうか。

 ここにきて米国経済が総じてしっかりしており、中国についても回復しつつあるとの見方も出てきた。このため、米国や欧州、そして中国の株価指数が大きく戻しており、最も注目されやすい米国の主要株価指数は過去最高値に接近している。

 これに対して長期金利をみると、米10年債利回りは昨年11月から低下トレンドが続き、3月27日の2.3%台あたりから、ここにきて2.6%近辺に戻している。ドイツの10年債利回りも一時マイナスとなっていたが、再びプラスに転じてプラス0.1%近くまで上昇した。同じユーロ圏の中核国のオランダの10年債利回りの推移をみると、ダウントレンドから脱しているようにもみえる。

 日本の10年債利回りも3月28日にマイナス0.1%に低下したが、4月17日の引け後にマイナス0.010%とゼロ%に接近しつつある。

 そして面白いことに中国の10年債利回りをみると昨年12月の水準をすでに上回ってきている。

 果たして中国の長期金利が先行指標になるのかどうかはわからないものの、世界的に長期金利もボトムアウトしてきた可能性も否定はできない。これは日米欧の追加緩和観測の後退とかによるものではなく、実体経済を意識したものともいえるのではなかろうか。株式市場に比べて債券市場のほうが景気の見方に対してやや慎重になっていたことや、FRBやECBが正常化にブレーキを掛けてきたことで思いの外、長期金利が低下してしまったが、その反動が起きつつあるようにもみえる。

 日本の債券先物のチャートをみても、チャートが崩れつつある。日銀の国債買入や長期金利コントロールによって、日本の長期金利の上昇には限度はあれど、さすがに日本の長期金利のマイナスも行き過ぎであったのではなかろうか。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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