金融緩和で物価を上げられるという発想はやめるべき

(写真:つのだよしお/アフロ)

 総務省が22日発表した1月の全国消費者物価指数は、総合が前年同月比プラス0.2%と昨年12月のプラス0.3%から上昇幅を縮小させた。日銀の物価目標ともなっている生鮮食品を除く総合は、同プラス0.8%となり、こちらは12月のプラス0.7%から上昇幅を拡大させた。生鮮食品及びエネルギーを除く総合はプラス0.4%と12月のプラス0.3%からこちらも上昇幅を拡大させた。

 総合の落ち込みはキャベツやレタスなどの生鮮野菜が、昨年に高騰した反動で下落したことが大きい。生鮮食品を除く総合は、電気代や都市ガス代などエネルギー関連が押し上げた。生鮮食品とエネルギーを除く総合は宿泊料の上昇なども寄与した。

 ということで、今年に入っても日銀の物価目標の2%に、全国消費者物価指数の生鮮食品を除く総合が届く気配はない。日銀は非常時対応ともいえる異次元緩和をすでに6年近く続けている。いくらタイムラグがあると言っても、日銀の金融緩和策が物価を直接押し上げる効果を持っていないことは明白ではなかろうか。

 これは2014年の消費増税が影響したとの主張があるが、これによって消費の落ち込みは一時的にあっても、息の長い景気回復は継続しているとしているのは何故か。消費増税と物価との関連について、それほど影響があるという前提はおかしい。

 デフレからの脱却というが、日本の物価が上がりにくいという面もあるが、グローバルスタンダードとされる2%という数字に日本の物価を当てはめること自体に問題があるといえるのではなかろうか。

 いま統計がいろいろな意味で脚光を浴びている。毎月勤労統計(毎勤)の不正問題が国会でも取りあげられているが、もし現政権がアベノミクスの効果を強調したかったのであれば、賃金以前にこの物価の統計を操作すべきであったと思われる。むろん、そのような操作はあってはならないし、消費者物価指数についてはそのような操作が行われたという気配はない。

 結果として生鮮食品を除く総合は1%あたりにとどまった状態が続いている。これをみても、もうすでに日銀の金融緩和によって能動的に物価を上げられるという発想はやめるべきではなかろうか。その考えに基づいて、あらためて現行の日銀による異次元緩和策の修正を図る必要もあるのではなかろうか。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

有料ニュースの定期購読

牛さん熊さんの本日の債券サンプル記事
月額1,100円(初月無料)
月20回程度
「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

Facebookコメント

表示

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。