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投資詐欺にだまされないための必要最低限の金融知識

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 うその投資話を持ちかけ、愛知県の男性などから6000万円余りをだまし取ったとして、千葉市の会社の会長らが逮捕されたと、NHKなどが報じた。警察によると、この会社は全国の1万数千人から450億円余りを集めていたことから、実態の解明を進めることにしているそうである。

 この手の金融に絡んだ詐欺事件は繰り返し起きている。この要因としては日本人の金融リテラシーが足りないからとの意見もあるが、金融そのものに関心のない人も多いとみられ、そのために時間やお金も掛けられないとの現状もあるかもしれない。

 日々の株価や為替の動向には多少関心はあっても、たとえば金利の動きとか日銀の金融政策あたりになると、それに関心を持つ人は極端に少ない気がする。現在の日銀の金融政策は何と呼ばれるのかという問いに正確に答えられる人はどのくらいいるであろうか。答えは「長短金利操作付き量的・質的緩和」であるが、それがいったい何であるのかを正確に理解している人もそれほど多くはないのではなかろうか。私もその効果については理解はしていないが。

 我々に高度な金融教育が本当に必要なのかどうかはわからない。ただし、大事なお金を守るためには、このような詐欺に遭わないための必要最低限度の知識は必要であろう。

 お金の運用にはハイリスク・ハイリターンという言葉がある。高い収益を求めるためには、より高いリスクを覚悟する必要がある。つまり大きな損失も覚悟の上で、投資等を行わないと大きな利益を得るチャンスは得られない。

 あたり前だろうと言われるかもしれないが、このことをしっかり頭に入れておけば、投資詐欺などに遭うことはない。高いリスクに晒されずに、得られる安定したリターンはどのぐらいなのか、それは例えば、国債の利回りであり、預貯金の利子となる。

 それらが日銀の金融政策や物価の低迷であまりに低くなってしまっているから、より高い収益を期待してしまうというのはわからなくもない。しかし、少なくとも国債などの利回りより、高い利回りが提示されているものについては、リスクがあることを念頭に置く必要がある。しかも、そのリスクの内容(投資先や発行体のリスクなど)をしっかり把握できていなければ、それに投資すべきではないと考えておく必要がある。

 念のため、現在は10年国債の利回りあたりまでマイナスとなっているが、個人向け国債は0.05%の最低保証利子があり、0.05%あたりを基準に考えてほしい。

 何も投資商品を全否定するつもりはない。投資信託など含めて、その運用リスクをある程度把握できているのであれば、損失の危険もあることを念頭に投資すべきなのである。

 儲け話には裏があるのはいついかなる時もそうである。今回の詐欺グループのような口車に乗っかって、この人であれば社会に貢献しながら利益も得てくれると思い込むのは勝手であるが、それがどれだけ難しいものであるのかは、お金を運用してみるとわかる。もしリスクとリターンの関係を試したいのであれば、現物株などを購入してみると良いかもしれない。金融商品で安定的に儲けるのは容易ではない。それはプロであっても同様である。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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