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昔も今も重要なのは鍵、キャッシュレス社会のキーにも

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 カナダのデジタル通貨交換業者クアドリガCXは創業者のジェラルド・コットン最高経営責任者が昨年12月9日亡くなったことで、仮想通貨約1億9000万カナダ・ドル(約159億円)相当を引き出せない状態となっているそうである。

 クアドリガ運営で使用するラップトップや電子メールアドレス、メッセージシステムを暗号化し、資金と仮想通貨の扱いと会社の金融・会計面を全て創業者が1人で管理し、ハッキングを避けるため、仮想通貨の大半を「コールドウォレット」と呼ばれるオフライン管理に移していた。そのパスワードはおろか、会社の記録を一切見つけることができていないようである(以上、ブルームバーグの記事より)。

 以前は仮想通貨の流出が問題視されていたが、今度は鍵の保管の問題により、引き出せない事態となっているようである。

 もし日本の通貨を管理している日本銀行の金庫の鍵が、総裁一人で管理していたとすれば、同様の問題が起きかねないものの、当然ながらその管理運営はかなり厳重ながらも、不測の事態にも対処できようなものとなっていよう。

 仮想通貨の大きな弱点は、このような管理が費用面等も絡んで公的な機関に比べて厳重に出来ないことも挙げられよう。仮想通貨を売買するところは取引所とも称しているが、東京証券取引所などもかなり厳重な管理を行っており、やはり規模がそれほど大きくはない企業とはセキュリティー上に大きな違いがある。

 現在の鍵とは、ハードの鍵だけでなくソフト上の鍵のシェアが大きくなっている。我々も電子上の鍵となっているIDとパスワードをどう管理したら良いのかが、個人でも頭を悩ませるところとなる。

 クルマの鍵においても、取り扱いが楽なスマートキーであるが、このスマートキーが常に発している電波を盗んで、クルマを盗むといった事件も発生しているそうである。

 キャッシュレス決済においても当然ながら鍵が重要になる。電子マネーのSuicaの普及においても、障害に強い分散型であることから、システムカードの内容を書き換えられる暗号キーの取り扱いがひとつの問題となるとの指摘もあった。

 いずれにしても特にキャッシュを扱うにあたっては、今も昔の鍵が重要なキーになっているようである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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