Yahoo!ニュース

高齢者のキャッシュレス決済が拡大しているのは何故なのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:川窪隆一/アフロスポーツ)

 29日の日経新聞に興味深い記事が掲載されていた。「電子マネー、高齢者に拡大」というタイトルの記事で、高齢者の間でキャッシュレス決済が予想外に広がっていると伝えている。

 「家計消費状況調査による電子マネー利用額の変化だ。世帯主が70歳代以上では2012年時点で年8688円と全世帯平均の8割だったが、17年には1万6216円に増え全世帯の平均に並んだ。80歳代以上に限ると1万7492円と全世代で最多だ」(29日付日経新聞)

 日本ではキャッシュレス決済が進んでいないという見方があるが、もう少し調べてみる必要があるのではなかろうか。

 中国で拡大したQRコード決済だけがキャッシュレス決済ではない。日本ではむしろ、交通系のSuicaをはじめとして、スーパーやコンビニで利用できる電子マネーの利用が浸透しており、それが高齢者にも広がっていることがうかがえる。

 高齢者による電子マネーの利用の拡大に寄与しているのは、セブン&アイ・ホールディングスで利用できる電子マネーのnanacoなどのようである。

 「nanacoは一度に入金できる上限が5万円に設定されており、紛失時に利用を停止できる機能もある。キャッシュカードを持ち歩き、ATMで現金を下ろして使うよりも安全性が高いと受け止められているという」(29日付日経新聞)

 現金であれば盗難や紛失の可能性があり、特に高齢者にはそのリスクがどうしても高くなってしまう。それが電子マネーであれば、カードを落としても利用を止められるなど、安心面がある。また、小銭を扱う必要がないため煩わしさからも解放される。

 日本では高齢化が進み、資産を保有しているのも高齢者が多い。この状況からも、高齢者向けの電子マネーの促進は理に適う。高齢者にとっては扱いづらいと思われるスマホ決済よりも、こういった電子マネーの利用拡大の促進も考慮しても良いのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事