Yahoo!ニュース

ドル円は再び105円割れの可能性も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 米連邦準備理事会(FRB)は9日、2018年12月18日~19日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。参加者の多くが株価下落を懸念して「インフレ圧力も落ち着いており、追加の政策判断を様子見できる」と表明していた(日経新聞電子版)。

 12月20日の米国株式市場は、FOMC後の声明で緩やかな利上げを続ける姿勢を維持したことなどから下落していたが、議事要旨にあったニュアンスが含まれていれば、市場はそれを好感していた可能性がある。パウエル議長はもう少し市場のセンチメントを意識していれば、反応は異なっていたはずである。ただし、これはトランプ大統領の利上げ批判に対抗する為に意識的に行ったとの見方もあったようである。

 それはさておき、FOMC議事要旨の内容からは、先行きの景気不安が拭えなければ、2015年末に始まった利上げサイクルを打ち切る可能性もにじませるものとなっている(日経新聞電子版)。

 このあたりは市場と共通認識であるように思われる。今年に入り、金融市場ではFRBの利上げ継続は難しいとの認識もあらためて強まり、1月3日に米10年債利回りは2.55%に低下していた。

 日本時間の3日の朝7時半過ぎに開いていたシドニー市場の時間帯にドル円が急落し、一時104台まで急落した。

 米10年債利回りと急激な円高の背景にはアップルショックがあったが、これも世界的な景気減速を意識させるものであり、それによる米利上げ観測の後退による動きとも捉えることができる。

 米10年債利回りの低下も年始ということで参加者の薄いところに米債が買い上げられた面もあったかもしれない。ドル円の104円台もいわゆるアルゴリズム取引とも呼ばれているコンピューターシステムを使ったプログラム売買やロスカットにより、動きが加速された面もあろう。

 しかし今回のように一時的なエラーのような動きで付けた水準は、トレンドに変化が生じない限りは、あらためてひとつの目処ともなる。つまり再度つけてくる可能性は高いのではなかろうか。

 米10年債利回りの2.55%とドル円の104円台をいずれ付けにくる可能性が高いとなれば、日本の10年債利回りが再度マイナスとなる可能性も意識され、そして、東京株式市場にとってはマイナス要因ともなりうる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事