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10年債利回りが再びゼロ%に

久保田博幸金融アナリスト
(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

 21日から24日にかけて米国株式市場は大幅続落となり、25日の日経平均株価は1000円を超す大幅な下げとなった。米債も買い進まれた。これを受けて25日の債券市場では10年債利回りが一時2017年9月11日以来のゼロ%をつけた。

 米10年債利回りは11月初旬に3.2%台に上昇していたが、その後はじりじりと低下し、2.7%台となっている。リスク回避の動きとともに、米長期金利の低下もあり、ドル円も11月末の114円台からここにきて110円台に下落してきた。

 25日に10年債利回りはゼロ%をつけたものの、この日の日本相互証券での現物債の売買高は3000億円台と少なかった。積極的な買いが入ったというよりも、打診買いのような動きになっていた。

 25日の債券先物も買われたものの、中心限月の3月限の日中高値は152円66銭までとなり、19日につけた152円84銭には届かなかった。25日は商いそのものも低迷しており、19日に6兆円を超す売買があったのに、25日は1.6兆円程度しかなかった。

 この動きが示しているのは、19日あたりまでの仕掛け的な動きがやや異常であったということではなかろうか。債券先物の中心限月の移行のタイミングを見計らって、チーペストの品薄感などもあり、先物主導の踏み上げ相場を仕掛けていたとみられる。

 債券先物の動向や動いた時間帯を見る限り、この仕掛け的な動きは海外勢であったとみられる。特に債券先物はナイトセッションでの出来高が増加するなどしていた。しかし、この動きは19日につけた152円84銭でピークアウトした。

 19日にFRBは追加利上げを決定した。もしかするとこのFOMCまでの仕掛け的な動きであったのかもしれない。米債もこの間に上昇しており、米債と円債先物を同時に仕掛けていた可能性もある。

 25日の東京時間での債券先物の出来高は薄く、さらにこの日のナイトセッションはクリスマスということもあるが、わずか397枚だけとなっていた。

 これによって仕掛けていた海外勢が完全に手を引いたといえるのかどうかはわからない。しかし、10年債利回りのマイナス化は特に国内の市場参加者は望んでいないことも確かであり、ここからの買い仕掛けもやりづらい。それでも株式市場や米債などの動向如何ではリスク回避の動きもともない、円債がさらに買い進まれる可能性もないとはいえない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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