日銀は異常な緩和策からの軌道修正を行うべき

(写真:つのだよしお/アフロ)

 NHKのサイトに「退任から5年半 白川前日銀総裁が思うのは」というタイトルの特集がアップされていた。

NHK「退任から5年半 白川前日銀総裁が思うのは」 https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2018_1106.html

 白川前日銀総裁は10月に「中央銀行」という著書を出版している。私も購入したが厚くて重そうなので電子版で購入し読み始めている。日銀の金融政策に興味のある方は是非読んで欲しい本である。

 NHKでのインタビューのなかで、白川氏は何故この本を出版しようと思い立ったのかについて次の様に語っている。

 「金融政策をめぐって内外でいろんな議論が行われ、意見が鋭く対立するケースが過去にもありました。なぜ意見の違いが生じるのかと考えると、中央銀行の役割について、人々の理解のしかたが違うことに起因していると感じたのです」(白川氏)

 遠回しながらもこれはリフレ派と呼ばれる人達に向けて、その考え方は果たして正しいのかと説いているようにも思われる。そして金融緩和については次の様なコメントをしている。

 「金融緩和策とは、経済に大きなショックが加わったときに、できるだけ経済の変動を小さくするために行う政策です。この政策自体は本質的には将来の需要を現在に持ってくるという政策なんですね。需要の先食いですから数年間は頼れるけれど、ずっとは頼れないのです」

 特に大胆な金融緩和策は、安倍首相の言うところのリーマン並みのショックが起きたときに行うべきものであり、歴史的なショックが解消しつつあるようなタイミングでおこなうべきものではなかったはずである。

 大胆な緩和で物価上昇を目指そうとしても、それが叶わなかったからといってさらに追加緩和なり緩和の修正を行ってきたこの5年間はいったい何だったのであろうか。

 白川氏のいうところの需要の先食いを大胆にしてしまったことで、それは将来に対する不安を生じさせかねないものとなる。いまだ追加緩和を主張する審議委員もいるようだが、それに何の意味があるのか。しかもそれでうまくいく保証もなければ、需要の先食いをさらに行うこととなり、そのあとの処理をさらに困難にさせかねない。

 そろそろというか、なるべく早く日銀は、平時にも関わらず行ってしまっている非常時対応のはずの異常な緩和策からの軌道修正を行うべきではないかと思う。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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